【映画】「ベルリン陥落」
1949年公開のソ連の戦争映画「ベルリン陥落(Падение Берлина)」(ミハイル・チアウレリ監督)を観た。
カラーの2部構成で、当時のソ連の最高指導者ヨシフ・スターリンを持ち上げたプロパガンダ・ムーヴィーだな。
スターリン死後のフルチショフのスターリン批判で評価を落とし、今のプーチン・ロシアでも上映されてないというから、ある意味、貴重かもしれない。
第1部は、鉄工所勤務のアリョーシャと小学校教諭のナターシャの恋物語だが、ナチス・ドイツによるバルバロッサ作戦に巻き込まれて、ナターシャは捕虜となってしまい、2人はバラバラになってしまう。
第2部は、ナターシャを取り戻すためにアリョーシャが赤軍に入隊してモスクワの戦いに参加する。そして、スターリンの指揮の下、スターリングラード攻防戦に勝利し、ベルリンへ進撃、赤軍は勝利をおさめる。アリョーシャとナターシャも再会し、スターリンの栄光を称えるといった内容だ。
スターリンを演じた役者もモノホンにソックリで、敵のナチス・ドイツのヒトラーはもとより、ゲーリング、ゲッペルス、ヒムラーなど、ナチ高官たちもクリソツ。役者を集めるのに苦労したろうなぁと思わせる。
映画「ヒトラー 最期の12日間」のように、ヒトラーがちょっと笑える滑稽で狂った独裁者としてだけ描かれているが、ヒトラーの指揮から精神を病んでいく様子、最期のエバ・ブラウンとの結婚、自殺まで、スターリンよりも時間を多く割いて描いてるような気がする。スターリンは粛清でヒトラーを上回る悪行を重ねた独裁者なのに。
スターリンのプロパガンダ映画だから、とにかくスターリンが自由と平和を望む決断力のある正義の指導者のように描かれている。
ヤルタ会談でも、ベルリン進撃に準備不足を理由に躊躇するチャーチルに対し、強い決意で進撃を宣言したり、連合国の指導者の中でいかにもスターリンだけが勝利に貢献したように描かれていて、多くの犠牲者をねぎらったり、プロパガンダ映画はどこも似たようなものだが、真実とギャップが大きければ大きいほど、つまり嘘が多いほど、滑稽で陳腐だ。
ベルリン市街戦やドイツ国会議事堂の戦闘シーンなど、当時としてはスケールがデカくて多数のエキストラでリアルだけど、それだけで恋愛ストーリーなどはやっぱり素人っぽくて安っぽいね。
スターリンの偉大さを際立たせるために、ヒトラーを卑屈な狂気の精神異常者のように描いたのかもしれない。エバ・ブラウンはキレイだけど。
ラストの「スターリン讃歌」の合唱の中、ベルリンに飛行機で降り立ったスターリンに対し、解放された世界各国の捕虜達から各国語で祝福を受ける場面はプロパガンダ映画の定番(レニ・リーフェンシュタールの映画にも似たようなシーンがあったね)で気持ちが悪いね。
しかし、当時、スターリンの機嫌を損なわないようにビクビクしながら作ったんじゃないだろうか?