【アニメ映画】「アシュラ」

故・ジョージ秋山先生の、「銭ゲバ」に並ぶ70年代の傑作漫画「アシュラ」がアニメ化されていたなんて。2012年の東映制作アニメで、監督はさとうけいいち。Amazonプライムにて。

永井豪先生の「デビルマン」のラスト、ヒロインのミキが悪魔と化した大衆に虐殺されるシーンと同様、原作は素晴らしく猟奇的で衝撃的な作品であったが、このアニメも面白かった。原作漫画は、「デビルマン」より前の作品で有害図書指定を受けてる。

アシュラといったらカニバリズム(人肉食)で、平安時代末期、散所太夫に捨てられた母が、産み落とした我が子(アシュラ)を、飢えに耐えきれずに焼いて食おうとするところから始まって、独りで成長したアシュラ自身も生き抜くために人を襲って殺して食ったり、アシュラに優しく接した若狭(ワカサ)という女の子を飢えから救うために人肉を持って行ったり、洪水や旱魃、貧困、応仁の乱により荒廃した京で死肉を食らう庶民もいたり、人間性を問うような衝撃的な描写がたくさん出て来る。

アシュラは放浪の僧に教えられ、若狭の優しさに触れて、言葉を覚えて、ようやく人間性を備えていくが、ケダモノとして生きていた頃よりも、人間としての苦しみ、悩み、悲しみ、嫉妬の情が湧いて来るのだ。

若狭の好きな男を嫉妬から傷付けて、若狭を救うために人肉を持って行ったら、それを食べたら人間として終わり、と拒否されて(若狭の父は食うが)、ついに彼女は死んで…。

極限における人間性とは何か、人間の“業”を徹底して描いたジョージ秋山先生の大傑作なのだ。アニメは、ちょっと尺が短過ぎたかなぁ。

「こんな時代に産みやがって!」と嘆くアシュラに、放浪の僧が言う。「人を憎むな。己を憎め。己の中のケダモノと戦え」。

「罪を背負い、それでも与えられた命の限り生きようとあがく。だからこそこの世は美しい」…。

ラスト、アシュラが頭を剃って僧になり、仏像を彫っててホッとした。


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TOMOKI
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。