「人殺しの息子と呼ばれて」
こんな凄惨な洗脳監禁殺人はないってくらいで、報道規制が敷かれたという「北九州連続監禁殺人事件」。
主犯の松永太(死刑)と緒方純子(無期懲役)の、実の息子(長男)への長時間インタビューをまとめたもの。
YouTubeで、そのTV番組「ザ・ノンフィクション」を見たので本も読んだ。
前に、この事件のノンフィクションを読んだが、巧みな弁舌で他人の家に入り込み、全員を監禁虐待で奴隷のように洗脳して、家族同士で殺し合いをさせる…海外でも特異な犯罪例として注目を集めたらしいが、もう凄まじ過ぎて気持ち悪くなっちまったくらいだった。
当時、その凄惨な現場にいた9歳の少年が、松永らの逮捕と共に保護されてから、20代と成長する中でいろいろと経験して考えた記録だ。
やっぱり、松永への恐怖が支配してた密室で、自身も度々“通電”という虐待を受けて、人間の子供として扱われなかったから、トラウマやPTSD等でかなり大きな精神障害を負ったのでは、と思ってたけど、意外と表向きはハッキリと理路整然に自分の意見を話してて、読む限り、頭の回転が速いようにも思われる。家にいる時は電気を付けられないなどの、表には出ない隠れた障害があるかもだが。
“人殺しの息子”なんて、自分で選んだわけじゃないし、運命としかいいようがないけど、実の息子となると、やっぱり一般大衆はマトモな人生を歩むのを許さないね。
周りがそういう目で見て、距離を置くから、まだ子供だった本人も誰も信用できなくなって荒れてしまうのも痛いほどわかる。
何かマトモに事が運んだとしても、松永の実の息子という事実が邪魔をして、必ず壁にぶつかって自分を傷付けることになってしまう。
犯罪被害者側もそうだが、加害者側の、プロによるケアも絶対に必要だと思う。
しかし、自分の子供に“通電”して、また心理的にも苦しんでる姿を見て、楽しんでる表情をするなんて、松永太という人間は一体どういう脳の構造、心理をしてるのだろうね。単にサディストではないよなぁ。興味深い。今、彼は糖尿病が進んで介護を必要としてるという。
苦悩を重ねて、母親には「苦しんで生きろ」、父親には「俺はあなたのあやつり人形ではない」といい、「自分がしてもらえなかったことをしてあげられる人間になりたい。両親が殺人犯だけど、生きてます、生きていけます」と自分の人生に向き合えるまでに成長している。でも、かわいそうだけど一生、苦しみから逃れることはできないと思う。
今はYouTubeでもいろいろと発信してるようだ。
犯罪は大きければ社会性を帯びるから、当事者が世間の波に揉まれるのは仕方ないものだ。でも、それが当事者にとって悪いことばかりであれば、それだけ国が最悪だということだ。