【古典邦画】「愛の世界 山猫とみの話」
まだ10代のデコちゃん(高峰秀子)主演の、1943(昭和18)年の作品「愛の世界 山猫とみの話」(青柳信雄監督)。YouTubeにて。
脚本の黒川慎は後の黒澤明。
地方の児童更生施設に引き取られた、デコちゃん演じる16歳の少女「小田切トミ」。早くに両親を亡くし、孤独な環境もあって、心を閉ざして、山猫と言われる程、粗暴で反抗的な不良少女だった。そんなトミが、理解のある施設の女先生や院長、施設を逃亡した先での幼い兄弟との触れ合いを通して、徐々に更生していく姿を描く。
戦時下の、国策に近い教育映画だな。
施設の同級生らにイジメを受けて争い、ブチ切れて施設を逃亡する前半は、トミはずっと押し黙っていてセリフもない。心を開かない不良少女の孤独感や悲しみ、自暴自棄な怒りを、表情と仕草だけで表現するのは流石だ。デコちゃんの素晴らしい演技が観れる。
施設を逃げ出したトミが、山中で、天候が悪くなり、木々が風に煽られて、人のように見えたりして、恐怖の一夜を過ごすが、この演出はクロサワさんらしいと思う。
空腹で山中を当てもなく歩き回った末に、ある山小屋に辿り着いて、囲炉裏にあった雑炊を貪り食ってたら、そこで、熊狩りに出かけた父親を待つ幼い兄弟と出会う。「あたいが食べた」…トミがようやく声を発する。
トミは兄弟の仕事を手伝い、交流を深めていく中で、徐々に、表情が変わり、人間らしさを取り戻していく。
米が底をつき食べるものがなくなったところで、トミを捜索に来た大人たちと出会う。逃げるトミと泥だらけになっても追う女先生、これもクロサワさんらしいダイナミズムの演出だ。
女先生の優しさと理解もあって、トミは更生、施設に戻った彼女は、同級生らと共に一生懸命になって畑を耕している。
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