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「八月の鯨」

出演者全てが高齢者(若くても70代)で、今じゃ皆さん、鬼籍に入ってしまった映画「八月の鯨(The Whales of August)」(87年・米、リンゼイ・アンダーソン監督←彼も没)。

撮影当時93歳だったリリアン・ギッシュ(サラ役)と79歳のベティ・デイヴィス(リビー役)が主演。

2人とも有名なハリウッド女優らしいが知らない。

サラとリビーの老姉妹の、ある夏の日々を淡々と描く。

特別な展開もなくて活動的じゃないのは高齢者だから監督も気を使ったのかもしれない(笑)。

サラは白内障で眼が不自由になったリビーの面倒を見ながら別荘で暮らしているが、リビーがだんだんとわがままになり、招いた客にまで冷たい態度を取るようになる。
サラも、もうリビーとここでは暮していけないと考えていた。
しかし、幼馴染みのティシャがお節介で、2人が住む別荘を売る算段をするのをきっかけに、2人はまたこのままここで生活を続けていく決心をする…。

別荘は海が見える丘に建っており、老姉妹は毎夏、鯨を見るのを楽しみにしてる。すでに死と隣り合わせの歳の出演者とは対照的に躍動感溢れる海の風景はとても若くて素晴らしい。キラキラとした波間の光は本当にダイヤモンドを散りばめたみたいだ。俺もこんな場所で最期を迎えたいとさえ思う。

近くに住むロシア移民のマラノフ(元貴族)を別荘に招待するが、老姉妹はちゃんとドレスを着て、部屋を飾り付けて、お酒を用意して、レディのように振る舞うのは流石だ。いくつになっても、こういうオシャレ心は失いたくないものだね。マラノフもあくまで紳士として老姉妹に接しているし。

老いを身近に感じる環境にいて、あらゆる衰えをまだ受け入れることができないでいる。老いに対してイライラして拒絶するばかり。いつになったら老いをちゃんと受け入れることができるのだろう。どっちにしろ歳を重ねれば動けなくなる。それはいきなりやってくるのだろうか。この映画の出演者みたく、静かに海を眺めるだけで満足するようになれるのか。いくら歳を重ねても今まで通りにプライドを保ち、飽くなき幸福を追求することが可能だろうか。映画を観てそんなことを考えた。

「人生の半分はトラブルで、あとの半分はそれを乗り越えるためにある」は、この映画の名言。人間は最期までトラブルと無縁でいられないものだけど、それが生きる糧であってもトラブルはやっぱりイヤだね。

リビーが夜中に白い髪を下ろして立ってる姿は、マジでゾンビ!恐ろしい(笑)。

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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。