国策映画「桃太郎 海の神兵」
太平洋戦争末期、1945年公開のアニメ映画「桃太郎 海の神兵」。
当時の海軍省の命を受けて、松竹動画研究所が作った国策映画で、図書館にあった。白黒74分だけど、日本初の長編アニメ映画だって。
富士山が見える村に、海軍に出征してた猿、犬、キジ、熊の兵士が休暇で帰って来る。
近所の子供に海軍の仕事について聞かれ、秘密事項を隠して、航空兵であると説明する。
猿の幼い弟が海軍の帽子を川に落としてしまい、皆で協力して弟を助ける。
休暇が終わって、兵士は南方の海軍の飛行場に赴き、現地人に日本語を教えると共に、そこの桃太郎隊長と落下傘部隊の訓練に明け暮れる。
そこは、かつて平和な島だったが、鬼の騙し討ちみたいにして白人兵士部隊に征服された過去を持つ。
日本の海軍落下傘部隊は“鬼ヶ島”と化してしまった島への空挺作戦で、島を解放するといった内容。
海軍の落下傘部隊の活躍を描いて、「八紘一宇」と「アジアの解放」をPRしたもの。
物資が不足してた当時としては、よくできたユックリと動くアニメ動画だと思うけど、戦意高揚が目的の国策映画ってのはつまらないねぇ。なぜなら、コッチも現代の反戦や平和というイデオロギーにドップリと侵されてて、そういうイデオロギーの下でしか観れなくなってるから。
桃太郎隊長はじめ、海軍兵士の動物たちが力強くてキリッとした表情なのに対して、米軍白人兵士の、鼻だけデカくて卑屈にナヨナヨした振る舞いが極端だ。
途中、ほうれん草缶を持ったポパイと、髭もじゃでデカいブルートが出て来て笑っちゃった。
落下傘部隊が降下するシーンは、アニメとはいえ動きも細やかでリアル。多分、忠実に再現したのだろうな。
猿の幼い弟が、海軍の帽子を川に落とすが、実際だったら、「恐れ多くも天皇陛下から頂いた海軍帽を川に落とすとは何事か!」と鉄拳制裁となったであろう(笑)。
若い手塚治虫がこのアニメを観て感銘を受けたらしい。
もう一本、16分の短い白黒アニメ動画「くもとちゅうりっぷ」も入ってた。花畑で、てんとう虫の女の子と、それを襲うクモのメルヘン童話の様なお話。
コッチは幼少期の松本零士が観て感銘を受けたらしい。
プロパガンダ目的の国策映画ではないものの、そういう視点で観れば、擬人化されたてんとう虫の女の子が純粋な日本人で、悪役の真っ黒なクモが黒人に見えないこともない。
ピンチになったてんとう虫の女の子を嵐が起こって救うことになるが、“神風”が吹いたとも解釈できる。
このてんとう虫の女の子は、日本アニメ初の“萌えキャラ”だという。