マーク・E・スミスとTHE FALL
もう、すでに3年前かぁ。
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The Fallとマーク・E(エドワード)・スミスの思い出…。
最初にフォールを聴いたのは、ラフトレードのオムニバスアルバムだった。85年くらい。同じフレーズの繰り返しのガレージロック?で、マークの巻き舌の声がいかにも英国、マンチェスターの小生意気な青年みたいで「ふーん、凡百あるパンクロックかあ」くらいにしか思わなかった。
その後、あるファンジンのインタビューでノイバウテンのブリクサが「とても好きなバンドだ」と発言してたり、当時の過激なオルタナロックミュージシャンが総じてフォールを高く評価してた。
で、「そうなのかぁ」と最初に買ったのがヴァージンプルーンズのギャビンも参加した「The Wonderful and Frightening World」。8枚目のアルバムだった。
相変わらずの延々と繰り返されるリフに粘着質のマークのヴォーカルなんだが、この頃には英国オルタナロック界では確固たる地位を確立してたが、日本ではほぼ無名、人気も全然なかった。しかし、何回も聴いてると病みつきになるサウンドで表現主義的なジャケットも相まって、俺の中では存在が大きなものになって来た。
フォールの持ち味は何と言ってもマークのヴォーカルなんだが(他メンバーは入れ替わりが激しく、奥さんも同様)、俺には英語の、たまにマンチェスター訛りも入った歌詞がわからない。英国の文化、政治、音楽、生活、庶民、いろいろな事を風刺批判、愚痴ってるらしいが、だいたいこんなことかなあと想像するしかなかった。何かの音楽雑誌で日本語訳を読んだことあるが、やっぱり英国ならではのもの(英国人じゃないとわからない)で、イミフなことが多かった。
それから簡素なジャケットのファーストアルバム「Live At The Witch Trials」から、最後の「New Facts Emerge」まで30枚以上全てを揃えた。
自分で正式アルバムからシングル、ソロ、再発盤、ライブ盤、オムニバス、カバーアルバム、海賊盤、カセット、本、雑誌の切り抜き等まで、全部調べて片っ端から探して入手した。気付けばマニアになってた。
50枚を超える音源コレクションを揃え、日本でこれだけフォールを追いかけてるファンは俺くらいだろうと自負してた。日本じゃ今だにそんなに知られてないし。それからマメにサイトをチェックして、毎回逃すことなく新譜を揃えてた。
90年(いつだったかな?)の初来日ライブももちろん行った。マークが「日本人は魚臭いから嫌いだ」と言ったとか(笑)。拡声器を使ったヴォイスがなんとも過激で興奮したのを覚えてる。
英国を旅行した時も地元のラフトレードショップに行ってまだ見ぬアルバム、シングルを買い求め、マンチェスターでライブも観たかったけど、旅行のスケジュールが合わなくて断念した。街角に貼ってあったフォールのポスターをいっぱい写真に撮った。
初期の頃の音はパンクっぽいがマークはじめメンバーはフツーのオッさんみたいなファッションのインテリブルジョワみたいで全然ロックじゃなかったけど、音はいつまでもどこまでもラジカルだった。スルメイカみたいに聴けば聴くほど味が出る。
ロックが定音の否定ならばフォールの音はまさにそれだった。歌詞はわからないけど、マークの意図したものは音を聴いてて勝手にわかってるつもりだった。ちゃんとした秩序があるようで無秩序。予定調和の否定。直接過激な音を作るんじゃなく、あくまでロックの体裁を外れないところで結果的には過激な音よりも過激になるのだ。バンド名はアルベール・カミュの「転落」に由来するが、カフカの不条理な世界みたい。絶対メジャーにならずにインディーズそのもの。唯一「羊たちの沈黙」で曲が使われたくらい。
マニアの俺はフィリピンに行く前に左太腿にマークのTATTOOを彫った。
晩年、急に老けてクシャおじさんみたいな風貌になったが、昨年のツアーをキャンセルしたことで、マークが調子良くないというのはわかってた。まさか重病だったとは。
76年の結成から30年以上のキャリアを持ち、最期まで過激で裏切られなかった。享年60歳。マンチェスターの愚痴将軍。再度RIP…。これからも変わらず聴き続けます。
THANX
マークとフォールのいないオルタナロックの世界なんて…。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。