【古典邦画】「薔薇合戦」

成瀬巳喜男監督の、1950(昭和25)年の作品「薔薇合戦」。YouTubeにて。

女を描くことが得意な成瀬監督の真骨頂となる映画だ。

化粧品会社の女社長とその妹2人が、それぞれダメな男と恋をして、振り回されて裏切られた結果、不相応ということで、身の丈に合ったことを、ということで逞しく再出発を図る話だ。あくまで当時の価値観が中心で、今だったら批判されることもあるかもしれない。

会社を大きく発展させたいということで、幹部社員の夫と共に乗っ取りを企む取締役の長女の真砂(三宅邦子)。
しかし、夫が背任横領の疑いをかけられて、夫は病気になって死んでしまう。
会社でタイピストをしてた妹の雛子(若山セツ子)は、コレをネタに営業部長から脅されて暴行されてしまう。
会社への報復を誓った真砂は、パトロンを探して、新しい化粧品会社を創設、目ぼしい社員や美容師を引き抜く。
末の妹の千鈴(桂木洋子)は、雑誌記者でアパートに住み、同僚の男と同棲している。
真砂は、雛子を政略的に社員の男と結婚させる。
雛子に好意を持っていた腕利きの宣伝部員の園池(鶴田浩二!)は、雛子を不憫に思い、何かと彼女を助ける。
しかし、雛子の夫は2人の関係に嫉妬、雛子を風呂に入れて鍵をかけて閉じ込めて殺そうとする。
千鈴も、同棲する男に妻子があったことを知って傷付く。
せっかく真砂が立ち上げた会社だが、有能な社員は他に引き抜かれ、雛子の夫が商品を横流ししていたことが発覚して、営業不振に陥ってしまう。
社長の真砂は精神的に疲弊して、ツバメとなった若いハンサムな社員に頼るようになる…。

全てを清算して、残った真砂と千鈴は、店を小さくして再出発を図り、雛子は夫と離婚する決心をする。

「女はどうしてもすがりつくようにできてるのね」というセリフの通り、男を信じて付いて行くと、利用されてダメになってしまう姉妹3人。どうしてもダメ男を選んでしまうからそうなるのかもしれないが、トラブルが襲ったことで、浮ついた気持ちじゃなくて、自分の足下をシッカリと見ることができる。

俺みたく昭和の価値観のジジイには、頼られると、カワイイなぁ、守ってあげよう、という気持ちになるけど、成瀬監督は、男に左右されることなく女性が自立してシッカリと自分の道を歩むことを応援する気持ちで、この映画を撮ったのだと思う。

極上のメロドラマだった。

姉の犠牲になる雛子の若山セツ子(55歳で自殺しちゃうけど)がカワイソウでカワイイし。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。