田山花袋集
ゆ〜っくり読んでる新潮社版「日本文學全集」。第8巻は「田山花袋」集。
田山花袋といえば、病気で死が迫り、息をするのも苦しそうな彼に対して、見舞いに来た島崎藤村が「田山くん、死んでゆく気分はどうかね?」と尋ねて、田山が「経験したことがない暗いところに行くのだから、なかなか単純なものじゃないよ。独りで行くと思うと寂しい」と息も絶え絶え答えたというエピソードが、2人の、ライバルとして牽制し合ったegoisticな関係を表しているようで面白い。
やはり「蒲団」が有名だと思うけど、女学生の弟子を持った妻子ある中年作家が、女学生に恋人があるのを知って、2人の仲を邪魔をして、ついに怒って破門にするが、女学生がいなくなって、彼女が使ってた布団に顔を埋めて泣く…という嫉妬に狂ったクズ中年男の話。
女学生が使ってた夜着の匂いを嗅いで、顔を押し付けて悶えたり、セクハラオヤジと化した主人公の様子がとても面白い。明治でもあったのだねぇ。
「田舎教師」のように、田山花袋は、つまらない風景描写を長々と書いた、自然主義文学の私小説と言われているけど、次に収録されてる「百夜(モモヨ)」のように、お銀と島田のキレイな男女関係、老境の心理に達したような作品も意外と面白いね。
関東大震災後の東京で、惚れた女に家を建ててあげれば、そりゃあ、喜ぶわね。好きな女の喜ぶ顔を見ることが男の一番の幸せだろう。
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