「キリング・フィールド」
「キリング・フィールド(The Killing Fields)」(84年、ローランド・ジョフィ監督)。
アカデミー賞で各賞を受賞、最後にジョン・レノンの「イマジン」が流れる感動のヒューマン大作なのだが、俺的にはウムム…。
NYタイムズの記者、シドニー・シャンバーグ(ピューリッツァー賞受賞)のカンボジア内戦を取材した体験を基に映画化。
確かに、現地人の助手、ディス・プラン(カンボジアの報道写真家)の命辛々の強制労働体験は引き込まれるが。
ポル・ポト率いるクメール・ルージュの無茶苦茶な毛沢東主義の原始共産制と、何百万人も大量に虐殺した狂気の事実がもっと描かれてるのかと期待してたから。
シドニーは大国アメリカ人らしい記者で、ここでそんなことしたら殺されちゃうゾとハラハラするシーンがあって、死を恐れずに勇猛果敢に取材する姿勢はスゴいなぁって思うけど、なんだかなぁ(笑)。
戦争映画だけど、ダイレクトに戦いで血や肉が飛び散るみたいな残酷なシーンはないけど、子供が兵士になって、また上官になって、捕虜を殺せと命令したり(次のシーンでは子供が処刑される)、水田の脇にたくさんの死体が捨てられてたりするポル・ポト政権の実際の狂気はやっぱり少しでも凄まじい。でも、クメール・ルージュが勢力を伸ばした背景や文明破壊ともいえる恐怖政治の実態が描かれてないので、わかりにくいのじゃないだろうか。
現地に飛んで行って実際の戦闘や市民、難民のことを事実のままに伝える報道は大きな意味があると思うが、ただ残酷だ、悲惨だ、関係ない市民が苦しんでる、特に子供たちが犠牲となってる、というヒューマニズム的視点で伝えても、そんなことは多分誰でもわかってると思うので、大きな意味があるとは思えない。フェイクも多いし。
それよりも、戦争の背景には何があるのか、なぜ戦わざるを得ないのか、戦争する構造はどうなっているのか、現地の人間はどう動いているのか、翻って我々に何ができるか、誰を助けるべきで、どういう動きが実効があるか、そして、なぜ人は戦争をするのか、まで、実際の戦闘地域から探り出して欲しいと思う。