「ボルベール/帰郷」

2006年のスペイン映画「ボルベール〈帰郷〉(Volver)」(ペドロ・アルモドバル監督)。

顔立ちのハッキリとした美人、ライムンダを中心とした、母、姉、娘、祖母、友人ら、3世代に渡る女同士のヒューマンドラマで、けっこう面白かった。

皆、複雑な他人に言えない事情を抱えながらも、逞しく生きるという女の本来の強さに魅せられてしまったね。

村の伝統で、3年半前に起こった火事で失った両親の墓の手入れをするライムンダと姉のソーレ、ライムンダの娘のパウラ。
ライムンダは村で一人暮らしを続ける認知症の伯母を説得して一緒に住むという目的もあった。
ライムンダの夫は仕事を失い、酒ばかり呑んでる。
ある日、ライムンダが仕事から帰るバスを降りると、バス停に娘のパウラが雨に打たれて立ってる。
パウラはライムンダの夫に暴行されそうになって、持ってた包丁で刺したと告白する。
丁度、ソーレから伯母が死んだと電話が入った。
ライムンダは「どうしても葬儀には行けない」と答えると、パウラと共に夫の遺体を、前に働いてたカフェの冷凍庫に隠す。

……これはさわりだけだが、この姉妹を中心に様々な出来事が起こる。ライムンダは夫の遺体をテキパキと処理してパウラを守る。最後まで埋めた夫の遺体は発覚しない(←それはねーだろって思ったけど)。

ソーレのところには家出中だった母親が戻ってくる。実は、この母親も、娘を守るために夫と不倫相手を火を放って殺した過去を持ってた。ライムンダは母親と長い間、仲違いをしてた。

娘や家族のために、大犯罪の殺人をも厭わない度胸の座り方や、胸元を大きく開けて色気を武器に繁盛するカフェを切り盛りする逞しさは、もう野郎なんて絶対に敵わないと思わせるね。また、映画に出てくる男は、娘に手を出したり、クズ中のクズばかり。

情熱の国、スペインの親しい挨拶、頬にチュッ、チュッと音を出してキスをすることを頻繁にやってて、すぐにカアッと怒るし、喜怒哀楽が激しいね。

結局、隠れて助けていた母親がライムンダの前に姿を現して、ついに和解するってことだけど、やっぱり血筋の結束は固いってことか。ちょっと後味は悪いが、女優たちの熱演で見応えのある作品に仕上がってると思う。

同性愛者であるこの監督は女性賛美の作品が多いらしいが、この作品も女性の強さをテーマにしたものだ。

基本、ライムンダも母親も、娘を暴行しようとした夫に復讐しながら、ムラ社会の中で、悲しみを乗り越えて、支え合って、逞しく、したたかに、ポジティブに生きるのだ。

一方で、母親と抱き合い、泣き崩れるライムンダ。一瞬でも見せる女らしい弱さ。フィリピーナの、何があってもファミリーを支える強さとしたたかさを持ちながら、時に、男に見せる純で子供っぽい甘えるような仕草を思い出したね。

強い女は美しいし、魅力的だ。スペインらしく、明るい赤を基調にした映画だね。

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TOMOKI
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。