「美しき冒険旅行」
英国・ニコラス・ローグ監督の「美しき冒険旅行(WALK ABOUT)」(1971)。
デヴィッド・ボウイ初主演の「地球に落ちて来た男」は期待通りじゃなかったけど、その5年前に創ったこの映画は素晴らしかった。
オーストラリアの都会に暮らす姉(14歳)と弟(6歳)。
ある日、父親のクルマで砂漠にピクニックにやって来る。
いきなり父親が銃を向けて一家心中を図り、姉弟は逃げる。
父親が自ら命を絶ちクルマも燃やしたため、姉弟は広大な砂漠に取り残されてしまう。
姉は弟を連れて砂漠をさまようが、やがて食料も水も尽きていく。
そんな時、姉弟は、成人の仲間入りの風習に従って放浪を続けているアボリジニ原住民の少年に出会う。
以来、姉弟は言葉の通じない少年に手助けされながら一緒に行動し、狩りや調理、泳ぎ、遊びなど、野性的な生活を送る。
そして、姉と少年は次第に惹かれ合っていく…。
冒頭から、文明社会を批判するような映像が続いた後、姉弟がさまよう砂漠では、トカゲやサソリ、ヘビ、アルマジロなど野生の爬虫類や虫のアップの映像が入る。一方で砂漠に転がってウジが涌くその死骸も。否応なく自然の厳しさが強調される。
アボリジニの少年が狩りをしてその肉を捌くグロテスクな映像もある。まだ幼い弟は男の本能からかすぐに打ち解けていくが、姉は行動を共にしながらも文明社会を忘れずにどこか距離を保ってる。
3人は砂漠を越えて小さな廃屋に辿り着く。
「結婚してここで暮らそう。子供も作ろう。お前をアボリジニの女とし愛する」という少年に対し、言葉もわからずにただ廃屋にある写真など文明社会の痕跡に興味を示す姉。
そんな様子を見て、少年は全身を彩り、姉に対して一晩中、花を持って求愛のダンスを踊る。
姉はそのダンスを見て「何をされるのか…」と怯えて閉じこもる。
アボリジニの少年と姉は所詮、相容れないのだった。
拒否されたと思った少年は翌朝、庭の木で首を挟んで死んでいた…。
姉弟は無事に町に辿り着いて救助された。
数年後、成長した姉は結婚して主婦となった。彼女は自然の中でアボリジニの少年と裸で泳いでた日々を思い出してた…。
当時16歳だった姉役のジェニー・アガターが、着替えたり、水を浴びたり、裸で泳ぐシーン(惜しげなくアソコまで)もあるが、学校の制服(ミニスカート!)を着てても、白人らしい美脚の瑞々しい無垢なホントの美少女で素晴らしい。しかも弟を守りながらも、ちょっとお高く止まったおしゃまな生意気な雰囲気も持ってて、アボリジニの少年でなくても惚れちまうね。
どんなに自然の中で戯れようと決して文明人間としてのプライドを捨てない刺々しさが処女の女の子らしい。
いつの時代も、老も若きも、男ってのはカンチガイしてしまう動物なのだ。これだけ長く時間を共にしたし、助けてもあげたし、俺を受け入れてる様子だし、よし!告白だ!きっと彼女も喜ぶに違いない…えっ、そんなつもりじゃ…あなたとはいい思い出よ、ってなことだね。
アボリジニの少年の贅肉の全くない、黒いストイックな肉体はめっちゃカッコいいと俺は思うけどね。都会の洗練された文明的な美しさの少女の白い肉体と、広大な自然と闘う実用的な黒い肉体と、こういう対比もあるね。
振られてすぐに死んじゃう男に対して砂漠に取り残されても弟を庇って歩き始める女と…やっぱり女は強いや。