「コックファイター」
B級映画の帝王、ロジャー・コーマン製作の「コックファイター(Cockfighter)」(74年、モンテ・ヘルマン監督)。
闘鶏(ニワトリ同士の闘い)に人生を賭ける男の姿を描く。
闘鶏なんて、なんて珍しくて地味なんだと思うけど、俺もフィリピン滞在時に見たことはある。外国人だから金を賭けることはできなかった。ホントは入場も禁止だけど、友人の計らいで見物だけ。闘鶏に賭けるピノイどもの熱狂と陶酔は確かに凄まじかった。
今じゃ、闘鶏も、闘犬も、闘牛も、動物愛護の観点から、批判の対象となってるのじゃないかと思うが、確かに鶏の脚に武器を付けて死ぬまで闘わせるのは可哀想な気もするけど(じゃあ、チキンを喰うのは…?)、男たちは、訓練して育てた鶏に自分の命を託す気持ちで激しく熱狂してるのではないだろうか。で、それによって自己の存在をハッキリと認識させるのだ。野郎たちが鶏を慈しみ、闘いに熱中する姿には、人間の根源的な本能としての攻撃・征服欲みたいなものを感じる。
主人公の、中年男フランクは、女や金、家まで投げ打って闘鶏に熱中するが、最後に闘鶏全国チャンピオンになって、誘って見に訪れた恋人に言われる。「こんな残酷な見せ物に熱中するなんて、あなたは最低よ!」。
理解してもらえないロマンに生きる愚かな野郎の物語。闘鶏に熱中する様を見せれば、女は惚れ直すに違いないと思ってることが、もうアホ過ぎる。これぞ闘鶏バカ。
最初に、ライバルとの闘鶏で惨敗となって、再び全国チャンピオンの座を得るまでは一切喋らないと誓い、トレーラーで寝泊まりしながら、無口で各地の闘鶏に参加する姿は、70年代のハードボイルド野郎のスタイルに近いね。トコトン自由でシブい。と思ったら、「ワイルドバンチ」「ガルシアの首」のウォーレン・オーツだったぜ。
しかし、案の定、この映画は、ロジャー・コーマン製作では失敗作となって、長いことお蔵入りだったらしい。TSUTAYAさん、あんがと!
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