【古典邦画】「朝の並木路」
成瀬巳喜男監督の、戦前の1936(昭和11)年の1時間程の小品「朝の並木路」。YouTubeにて。
後に成瀬監督と結婚する(離婚したが)ことになる千葉早智子の主演。
最後は、ちょっとしたドンデン返しがあって、ちょっとホッとしたかな。
田舎よりも都会で仕事を探そうと上京して来た娘が、先に上京した友達が女給として働くカフェーに滞在することになるが、カフェーに来る若いサラリーマンに恋をする話である。
当時のカフェーって、今のキャバクラみたいなものなのだろう。男性客に女給が付いてお酒をすすめている。
景気が悪くて、客も減って売上げも落ちているが、友達も女給たちも、田舎から出て来たばかりの娘を、優しく受け入れている。女給たちのいたわりあいが微笑ましい。
娘は新聞の求人欄で職を探すが、なかなか見つからない。仕方なくとりあえずカフェーで働くことになる。
初めての接客とお酒を経験して、あるサラリーマンの客に付く。深酒した彼を介抱したことがキッカケになって、お互いに惹かれ合う。サラリーマンは毎日のように店へやって来る。ある日、娘は嬉しくて深酒してしまう。
娘は、彼といろいろと夢を語る。結婚したら、彼を両親に紹介して、小さな家を買って、家具はどんなものを揃えて、子供ができたら…。
そして、娘は、彼に誘われて婚前旅行に行くことに。しかし、彼は落ち着きがなく、いつも周囲を気にしている。途中で汽車を降りてクルマに乗り換えたり、なるべく人目を避けるように。
実は、彼は、会社の金を横領して追われる身であった。官憲が迫って来て、山に逃げ込んだ彼と娘。彼は、娘に「幸せのままに死にたい。一緒に死んでくれ」という。娘は、「死ぬなんてイヤよ。お願いだから自首して。私はあなたが出て来るまで何年でも待ってます」と抵抗する。
…と、そこで娘は目が覚める。深酒して酔って寝てしまったのだ。彼との旅行は全て夢だったというオチだ。
サラリーマンは栄転で地方に行くことになって、2人は別れる。
田舎から出て来た純情娘も、失恋を経験して、一歩、大人になったのかな。娘は、今日も新聞の求人欄に眼を通す。