【古典邦画】「少年」

大島渚監督のATG作品は嫌いで、合わなくてイライラさせられることが多かったが…1969(昭和44)年の作品「少年」を。

実際に存在した“当たり屋夫婦”を題材に、低予算ながら全国でロケを行ったロード・ムービー。

当時のモータリゼーションの拡大を背景に、車の前にワザと飛び出して軽く接触して、法外な治療費や示談金を騙し取ることを生業にした夫婦が、当たり役を父親の連れ子である息子にやらせて荒稼ぎした。

大島監督らしい冗長な演出などは目立つが、戦争で傷を負って働けないとする父親と、その同棲相手の若い女と幼い子供と、少年の間は希薄な家族関係であって、彼は車の前に飛び出す恐怖と父親への抵抗から逃げ出そうとするが、結局、独りでは何もできないということでまた戻って来る。

理不尽ながらも環境を変えることができないという諦めから、父親と反目しつつも、上手く当たり屋を行うことに。

やがて一家は逮捕されることになるが、少年は、目の前で起こった事故と同乗者の少女の死を目にして、自分の境遇の悲しさを知る。少年ながらも“当たり屋”として生きなければならなかった自分の理不尽な運命に涙を流すのだ。人生の理不尽さ・不理屈さを知るには、あまりにも若かった。

脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。