「三島由紀夫紀行文集」
岩波からも出てたんだねー。
紀行文って、著者が旅先で、見て、感じて、考えたことを言語化する作業だから、至って主観性の強いモノなのだ。有名な観光地の、誰もが知ってる風景であっても、面白くなければ無視しても良いし。
そういう意味で、三島由紀夫ならではの繊細なトンガった感受性が存分に発揮された文章だと思う。それだけに著者と見方が合わなければイライラすることも多かろう。
昭和26年の年末から翌年春までの4ヶ月半に渡って巡った初の海外旅行の記録「アポロの杯」では、やはり、ギリシャや南米、太平洋上での“太陽”との出会いと筋肉を纏うことと健康への意識を綴った文章が、その後の三島の変貌がわかって、とても面白い。
南米リオで、付き纏われた現地の少年について、「少年愛の伝習を私に教えるつもりなのであろうか」と自問し、「それなら私はもう知っている」と書いている。三島が自分の同性愛を公に書いた文章だと思う。
この海外旅行以外にも、スペインや、三島の好きな米・ニューヨーク、ポルトガル、仏・パリ、ヴェニス、エジプト、インド他、国内数カ所を歩いた紀行文を収録している。
しかし、ただ旅先を頭の中で想像するしかないのだけど、今は写真や動画の方が、いくら豊かな言葉を並べても、伝わるものは大きいよねー。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。