【古典邦画】「夫婦」
成瀬巳喜男監督の、1953(昭和28)年の作品「夫婦」。YouTubeにて。
上原謙(中原)と杉葉子(菊子)の夫婦に、会社の同僚の三國連太郎(武村)が絡んでくるという、メロドラマの達人、成瀬監督の技が光るような良作であった。
地方で働く中原が東京に転勤となり、菊子はとりあえず東京の実家に身を寄せて、貸間を探す。
そして、中原の同僚で妻を亡くしたばかりの武村の家へ同居させてもらうことに。
菊子たちは、結婚6年目にして、まだ子供もいなくて、すでに倦怠期を迎えていた。
菊子は、武村の世話も甲斐甲斐しく行うが、中原はそんな妻の姿に嫉妬を覚えることもあった。
そんなことから、夫婦の溝は深まるばかり…。
上原謙が、どこか人ごとで常にハッキリとしないというダメ夫の役が上手い。それでいて、他意はなく、武村への感謝で彼の世話を焼く菊子に対する不信感と妬みは募るばかり。
中原の感情はよくわかるね。男は妻ということで安心し切っているから、他の男の存在や、妻の不満に気付けないのだ。
で、妻は溜まり溜まって、ある日、突然、別れを切り出されるということになりかねないのだが。
中原と菊子は、菊子の弟の結婚を機に、また引っ越すことになって、2人だけの生活が戻ってくる。
そして、菊子の妊娠がわかり、諸事情で一旦は堕ろそうとするが、中原も菊子も子供を諦めきれずに、苦労してでも育てようと決心する。そこに、また夫婦の絆が深まっていくのだ。
イイなぁ。少しの間でもいたわり合う夫婦の姿。俺が失敗しちゃったからか、こういう夫婦の姿に憧れがまだ残ってるね。
結婚は人生の修道院に入るようなもので、自らたくさんの禁止を背負うものだが、俺は結局、飛び出しちゃったしね。
若い三國連太郎の、時にワイルドで時に弱々しく、女心をくすぐって世話したくなるような態度もまた絶妙だ。「奥さんのことは好きです。でも僕だって理性は持ってますよ」という意識しないペテンのような素行は、三國さん個人の経験から来るのだろうね。