【古典邦画】「禍福(前編・後編)」

成瀬巳喜男監督の、1937(昭和12)年の長編作品「禍福」(前編・後編)。YouTubeにて。

前・後に分かれてはいるけど、合わせても2時間強の作品である。

禍福とは、災難と幸福、不運と幸運といった意味だが、また、ダメ男に裏切られた女の復讐劇かと思ったけど、そのダメ男との間に出来た子供を、ダメ男の新しい奥さんが引き取るという、何とも言えない、納得いかない結末であった。そんなに簡単に合理的に自分が産んだ子供を他人に渡せるものだろうか?新たな悲劇が生まれると思うが。

原作は菊池寛。主演は入江たか子で、ダメ男が高田稔、新しい奥さんが竹久千恵子。また、入江たか子が、男に裏切られて涙を流す女の役にピッタリだ。

新人外交官の慎太郎(高田稔)には、豊美(入江たか子)という恋人があった。
しかし、慎太郎の実家は、商売が上手くいかずに、金持ちの娘・百合恵との縁談を進めており、慎太郎もそれに抗えずに、豊美を捨てて、百合恵と婚約してしまう。
その時、すでに豊美は慎太郎の子を身籠っていた。
慎太郎への復讐を誓った豊美だが、偶然にも百合恵と親しくなり、慎太郎との関係を知らない彼女にいろいろと助けてもらう。
豊美はやがて女の子を産むが、何も知らない百合恵は、豊美の境遇を不憫に思い、夫の慎太郎が出張でフランスに行ってる間に、家に来るように説得する。
百合恵は、赤ちゃんを親身になって世話をする。
それを見た豊美は徐々に復讐心が薄れていく。
やがて慎太郎が帰国、豊美を見て、驚いて落ち込む彼。
諸々あって、全てを知った百合恵は、解決策として、赤ちゃんを自分と慎太郎の子供として引き取りたいと豊美に申し出る。
豊美も承諾するという話。

成瀬監督お得意の至極のメロドラマだと思うけど、そりゃねえよなぁ。当時の、結婚はあくまで家柄が一番、そして、女はその材料という世間一般の常識(ブルジョアだけかな?)であったことがわかるけど、ダメ男はほっといて、女同士の友情を大切に、赤子の将来を考えて、という流れでもあるし、やはり当時の抑えつけられた環境にある女性を応援する意図が成瀬監督にあったと思われる。

「禍福は糾(アザナ)える縄の如し」…幸せと災いは縄をより合わせたように、交互にやってくる。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。