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「愛する時と死する時」
「西部戦線異常なし」のレマルクの小説が原作の「愛する時と死する時(Zeit zu leben und Zeit zu sterben)」(米・1958、ダグラス・サーク監督)。
珍しく、連合軍側じゃなく、独ナチス側から描いた戦争映画だが、男女の恋愛を中心に盛り込んだ内容。
前線から2週間の休暇をもらって故郷に帰った兵士グレーバー。
故郷の町は爆撃を受け瓦礫の山、両親も行方不明になって絶望する中で、両親の行方を探すために知り合いの医者を訪ねると、既にその医者は強制収容所に送られた後であることを娘のエリーザベトから聞かされる。
落胆したグレーバーが去ろうとした時、空襲警報が鳴って、彼はエリーザベトと防空壕に避難する。
そこで2人は親密になり、逢瀬を重ねるうちに愛し合い結婚することに。
グレーバーが前線に戻るまでの限られた短い時間、2人は新婚生活を送るが…。
敗戦ムード漂う戦時下で不安定な生活を強いられる中でも、2人はデートを重ね、新しい家を見つけて住んだり、着飾ってお洒落な高級レストランで食事をしたり、ロマンチックな展開に観てるコッチまでニンマリと幸せな気分になってくる。
でも、案の定、長くは続かない。
グレーバーは休暇の延長を申請するが認められずに前線に戻る。戦場という現実が重くのしかかる。
混乱する中で民間人を虐殺しようとした上官を撃って民間人を助けるものの、逆に民間人に「人殺しめ!」と撃たれて死んでしまう。狂気の現場で発揮した正義感とヒューマニズムが仇となってしまったのだ。新婚なのに悲しい展開…。
2人の日常的な何気ない小さな幸せと、戦争時における人間の残虐性と狂気がコントラスト風に描かれてて、戦争という非日常に対する強烈な反戦のメッセージでもあると思う。レマルクらしい戦争表現だ。
最近の戦争映画のリアルにこだわった描き方ももちろん良いが、女性をメインに登場させて、ふんだんにロマンスを盛り込んで非日常を浮き立たせたこの映画の方がある意味、残酷かもしれない。
相手を想って慈しみ合うことも、捕虜を虐殺して敵を無慈悲に撃つことも、同じ人間がすることなのだ。前に観たアニメ「この世界の片隅に」を思い出した。
永遠のように思われる幸せも、一瞬にして崩れることもある。幸せは決して長くは続かない。同じく命も実に簡単に尽きることがある…極上のメロドラマだった。
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