【古典邦画】「君と行く路」
成瀬巳喜男監督の、戦前の1936(昭和11)年の小品「君と行く路」。YouTubeにて。
昭和11年は2・26事件が起こった年だ。家柄によって犠牲になる男女の恋愛悲劇だな。
デカい屋敷に住む朝次と夕次の兄弟。
元芸者で妾だった母が、死んだ旦那から譲り受けたものだ。
近所に尾上家の家があって、朝次は、そこの娘カスミと相思相愛の仲。
しかし、財政が苦しい尾上家は、カスミを資産家の老人に嫁がせるつもりだった。
それで、尾上家は、妾の子とカスミは結婚させられないと文句を付けていた。
そんな時、カスミの親友のツキコが、朝次とカスミの仲を取り持つためにやって来るが…。
結婚は、相手の家柄で大きく左右された時代で、たいていの場合、名家を保つために娘が犠牲になったのだ。
ツキコの計らいで朝次は、カスミとデートをする。お互いに愛を確認したは良いが、この愛が実らないのであれば独りで死ぬというばかり。
弟の夕次は、ツキコに一目惚れして、お互いに意識するようになる。
結局、カスミは老人と結納ということになって、自暴自棄になった朝次はクルマで暴走して事故死、カスミも後を追うように家の庭にある池で水死、ツキコも「同じようになりたくない」と夕次の元を去っていく。
いや〜、2・26事件で歌われたように、痛ましい物語ではあるなぁ。
しかし、母親が意外とあっけらかんとしたキャラだったり、カスミは「大丈夫よ、結婚なんかしないわ」と希望を語っているのに、朝次は嘆くことしかせずに、ただ死ぬ死ぬばかり。
究極の愛とは、死によって、さらに純粋に、美しくなるという美学がまだ残ってる時代なのだろうか。
成瀬監督にしては完成度は高くないが、成瀬監督らしいメロドラマだった。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。