【古典邦画】「神々の深き欲望」

「楢山節考」「復讐するは我にあり」など、衝撃的な作品を撮る今村昌平監督の、1968(昭和43)年の「神々の深き欲望」。YouTubeにて。噂には違わず素晴らしい作品であった。

南海の島(多分、沖縄方面)を舞台に、本土の近代文明とは離れたところでありながらも、民俗的な土着の文化・因習に則って生きる多くの島民と、徐々に近代化を取り入れて行く現状、そこで展開される根源的な狂気と性と死を描く。

主役は、三國連太郎演じる島の青年・根吉であるが、好きになった人妻ウマと寝て、その夫を殺したということで、村の掟に則って、海で撲殺される。

ウマの男は腹上死するが、ウマは柱に括り付けられて死ぬ。ウマに嫉妬した女は、家に火をつける。

根吉の妹のトリ子は、頭が弱くて、誰とでも淫らな行為に及ぶ。精糖工場建設のために本土から来た刈谷をも誘惑する。

根吉の親父は近親相姦で子を儲けた。

農耕と土着信仰に生きるこの島では、自然の猛威も全て神の祟りと理解する。予言者となる島の女が今後を占いによって決める…。

つまり、メチャクチャ泥臭くて濃ゆい島人と根吉の家族の関係であり、土着の信仰に則って生きているのだが、自分の性欲には躊躇なく従うという今村監督ならではの過激な描き方なのだ。

帰京した刈谷は、数年後、部長となって、妻を連れて島に戻るが、刈谷を待ち焦がれて死んだトリ子が化身したといわれるトリ子岩を眺める。そして、トリ子の幻影が現れる。

知的障害のあるトリ子を演じたのは故・沖山秀子で、今村監督と不倫の関係になって数回、自殺未遂もしてる。多分、今村監督は女優を、精神的に徹底的に壊して、一から役を作り上げるという、園子温のような、今は問題となってるやり方をする監督じゃないのかな。

孤島における閉ざされた中での撮影は相当過酷だったのでは。架空の設定が現実に現れたような感じだったと思う。

島の掟を破った根吉が乗った小舟を、仮面を被った島人が囲み、一斉に棒を振り下ろして殴って殺す場面は、閉ざされた社会の因習に伴う、村八分のような根源的な狂気を感じさせて空恐ろしい。

時折、動物や爬虫類、昆虫などの映像が挿入されるのも今村監督ならではだ。

とにかく、この映画は、今村昌平監督の傑作であったと思うね。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。