「ええじゃないか〜民衆運動の系譜」

古い本なので読み辛かったが…。

明治維新前夜の江戸末期に、関東から関西を結ぶ地域を中心に、所々で民衆たちが通りに大挙して出て、それぞれ仮装して、「ええじゃないか!ええじゃないか!」と声を挙げて踊りまくったという騒動である。

騒動は、特別に仕掛け人がいるわけではなく、自然発生的に起こったのであるが、キッカケは天から神符が降りて来たとして、男は女装、女は男装して、数日間に渡って踊って練り歩き、その地方の藩主の命によって鎮静化、その後、民衆は祝宴を開いたという。

民俗に根差した宗教的な行事ともいえるが、最初に、この騒動が起こったのは名古屋らしい。ちょうどお盆の時期に、名古屋地方で、空からお札が降って来たとの噂が広まり、民衆が“気狂いの如く踊り狂った”のが最初と文献にある。そして、東海道一帯に伝播したという。

お札が天から降って来るわけはなく、多分、噂が一人歩きしたか、誰かが言い出したものと思われるが、江戸末期という時代が変わる閉塞感があった時代状況の中で、生活もままならない貧困により苦しんでいた民衆が、不安と不満を爆発させたものだと思う。

一揆を起こせば死罪だから、天からお札が降って来たという、めでたい神事ということで、自ら、日常(ケ)を非日常(ハレ)に変えて、踊って笑って、もうどうにでもなれ、と自暴自棄的な、アナーキーな歌舞狂乱に興じたのではないだろうか。

自然災害の多い列島の、厄災をもたらすモノへの恐怖の払拭でもある。

これぞ、真の、日本民衆のパワーあるパフォーマンスだ。

ええじゃないか騒動の間に、盗みを働く者や人さらい、暴行などの犯罪も発生している。

この騒動が、“世直し”ならぬ“世直り”であることも日本らしくて興味深い。つまり、民衆が自ら立って自分の手で要求を得ようという一揆のような性格のものではなく、ただ、天から降った神符を契機とした他動的な狂乱であって、神の力による世直しを期待する性格のものなのである。

伊勢神宮への集団参詣である「おかげ参り」や、民衆が富豪を襲撃し破壊や掠奪を行う「打ちこわし」にも通じるものがある。


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TOMOKI
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。