【邦画】「あゝ野麦峠」
1979年の邦画「あゝ野麦峠」。監督は反体制的な社会派映画が多い山本薩夫。
山本茂実のノンフィクションが原作。中坊だっけなぁ、名前だけは知ってた。
明治時代。
始まりから、若い女工達が列を成して雪中行軍してるような“八甲田山”みたいで、カワイソウでツラかったけど、長野・岡谷市の製糸工場で機械のように長時間、働かせられて搾取される様はもっとツラかった。
田舎の山村の少女達が、たった13歳で、子沢山の家の苦しい家計を助けるために馬車馬のように働かせられているのだから。身売りだよなぁ。226の「昭和維新の歌」にも歌われたような状況だったわけだ。ノンフィクションが原作だから、盛りはあったとしても、この通りだったのだろう。
工場での仕事は、繭を煮て生糸を取る“糸取り”という作業だ。めっちゃ過酷で朝4時から夜8時過ぎまで、途中、10分で食事をするが、15時間以上も働いたわけだ。
当然、職場環境は劣悪で、繭を煮るから常に40度近い気温で、逃亡防止に鍵で締め切られている。日光も風も入らない蒸し風呂状態で、全身、汗でびしょ濡れになってる。皆、10代のカワイイ女の子なのに。
こんな環境でも、いろいろと助け合ったり、たまに出される祝いの饅頭に喜んだり、糸を取る技術を磨いて給金(100円)を上げてもらったり、寝室となる大部屋でガールズトークに花を咲かせたり、恋する男にドキドキしたり、資本家に対して組合的な行動を取ろうとしたり…肝が座った女の子は強いものだと感心する。それでも2人、自殺しちゃうけど。
女工哀史のちょっと早い青春劇だなぁ。
主人公は、大竹しのぶ演じる「みね」だが、若旦那(モロボシダンでクズ)にレイプされそうになったり、トラブルに見舞われても、持ち前の明るさで切り抜けていく。
しかし、劣悪な職場環境で、結核菌に冒されて倒れ、隔離された後、実家の兄が迎えに来て、背負われて郷里の飛騨に帰る途中で死んでしまう。理不尽な涙涙の物語だ。
時代がそれを当たり前だとしてたのだろう。女工はホントに奉公だけに生きる都合の良い機械だったのだね。欧米に追い付け追い越せとロシアと争って富国強兵策を取ってた大日本帝国だったしね。
しかし、キレイなカワイイ女優が多くて、リアルを求めるなら、もっと汚くてもよかっただろうと思う。
製糸工場の社主は三國連太郎で、女好きの若旦那は森次晃嗣、周りを固め女工をイジメる野郎たちも、まさに悪人ヅラでピッタリだね。
鹿鳴館のような豪華な建物で、ドレスを纏って踊りに興じるブルジョワ階級の女たちと、劣悪な環境下、滝のような汗をかいてフラフラしながら働く女工たちの対比がスゴい。
帝国主義的資本主義は必ず激しい貧富の差を生み出すのだ。
長野には資料館があるみたいだね。