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「暴君」 牧久

知る人ぞ知る、JR東日本のJR東労組委員長にして新左翼・革マル派の指導者であろう故・松崎明氏が、経営陣まで動かすほどの巨大な権力をほしいままにして、国会でも取り上げられて、病気で死ぬまでの評伝。前に同じ様な「JRの妖怪」を読んだと思うが、ビックリするような衝撃的な内容で、日本の鉄道の労働組合の裏面史だ。

法政大時代に身近に中核派がいたことから、新左翼ウォッチャーみたいなところがあるから、やっぱりこういう本は読みたくなる。

革命的共産主義者同盟(革共同)が、目指す社会は一緒でも、自ら行動して革命情勢を作るか、革命情勢になるまで組織拡大を図るか、の路線の違いで、中核派と革マル派(革命的マルクス主義)に分かれて内ゲバ、殺し合いが続く中、カクマル派は様々な労働組合に入り込み、組織拡大を目論んで来たのだが、JR(国鉄)が一番、人数の面でも浸透できた訳だ。

そのJRで組合の頂点まで登り詰めて、経営陣まで動かして会社を意のままにして、彼らがビクビクと顔色を伺うくらいに影響力を持ってしまった松崎明は、権力は腐敗するの言葉通りに、気に入らない者を徹底的に排除して、裏でテロや暴力、拉致、イジメ、嫌がらせ、盗聴、盗撮、言論弾圧を画策し、私腹を肥やし、ハワイに豪華な別荘まで買って、やりたい放題だったが、あっけなく病気で倒れてしまう。

カクマル派は反スターリン主義を掲げていたが(他の党派も同じ)、自らスターリンに成り果てたのだ。

倒れた途端に組合員の大量脱退や経営陣の労使交渉の刷新が起こってるから、それだけ松崎が権力を持ってることに組合も会社も不満タラタラだったことがわかる。

しかし、表に出てこないカクマル派の不気味なことよ。刑事事件でも、ハッキリとはしないが、多分、裏で松崎が糸を引いてるんじゃないかという事案が多い。

彼は表向きには転向の様に振舞っていたが(コペルニクス的転換)、最期までカクマルの一派であることは間違いないだろうと思う。

革命という最終目標のために、偽装やウソ、偽り、盗聴、盗撮、スパイ化などは当たり前だ。何が真実なのか。もう組織自体がカルト化してる。恐ろしい。革命なんて絶対に起こり得ないこの世界で、彼らは一体何を目指しているのだろうか。単なる組織維持なのか。昔、メーデーなどで、ヘルメットを被ったカクマルを見ると、近寄れない雰囲気があったなぁ。

人を支配するのはやっぱり“欲”だな。権力欲は厄介なものだが、結局、欲に支配されてしまう。上に就くと下の者はチヤホヤするから、その地位をなんとか維持しようと努める。そして、自分のやり方は絶対に正しいと思い込む。

松崎が巨大な権力を持ったのは、一面では、それだけの、圧倒的に人を惹きつけるような、誰も逆らえない“人間力”があったともいえる。

これは、その辺の陰謀論が霞むほどの陰謀だよ。いや〜スゴい。

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TOMOKI
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。