【映画】「ワイルド・ローズ」
刹那的・破滅的な女性ロックンローラーの自伝映画かと思ってたけど、それは全然違ってて、良い意味でぬるい感じがするカントリー・シンガーのホノボノとした自分を見つめ直すようなサクセス・ストーリーであった。実話ものでもない。
「ワイルド・ローズ(Wild Rose)」(2018・英、トム・ハーパー監督)。
感情移入して、ラストの約5分間、ローズが唄うカントリーに、映画の観客同様、ウルウルきちまったよ。
イギリス・スコットランドのグラスゴーが舞台。
麻薬密輸の罪で服役を終えたばかりのローズ。
2人の幼い子供を抱えるシングル・マザーでありながら、カントリー・シンガーになって成功する夢を持っており、子供の世話は母親に任せっきり。
とりあえず生活のために資産家の屋敷で清掃の仕事を始める。
掃除をしながら、ヘッドフォンでカントリーを聴き大声で唄っていたところを資産家の子供に見られて、資産家に唄の才能を認められる。
資産家の後押しを受けて、少しづつ夢に近づいていくが…。
資産家には、仕事を失わないために、刑務所に入ったことも、子供がいることも、全てを内緒にしてたが、案の定、資産家の期待が重くなって自ら告白することに。
母親には子供に責任を持たないことをなじられ、子供たちには嫌われて。
それでもローズはカントリーの本場であるナッシュビルに行くことを夢見て。
資産家と離れ、真面目に子供の世話を焼く姿を見て、母親はローズに「一度、ナッシュビルに行って見て来なさい」とお金を工面してくれる。
ローズはナッシュビルの盛況を見てやっと気付くのだ。カントリーとは自分の内面を飾らずに素直に唄うことだと。
そして、故郷に帰ったローズは自ら曲を作る。故郷のことや愛する家族、周りへの感謝を魂の唄にして。
夢を諦めるな、捨てるな、じゃあないな。好きなことだったらやり続けろだな。好きなことだったら、どこにいてもやれるだろうと。チャンスが巡って来るか、どうかはわからないけど。素晴らしい才能には、束縛も解放も関係ないのだ。
主演のローズを演じたジェシー・バックリーは、美人というよりも可愛いタイプで、表情に優しさが滲み出てる。仕事も真面目に取り組む。ドラッグもやらない。何よりも唄が上手い。子供達を愛して家族を大切にする。行動から自暴自棄で“はちゃめちゃ”に見えるけど、演じたローズも決してそうではない。