【邦画】「私は貝になりたい」
本当は、昔の、フランキー堺主演の映画(1959年、橋本忍監督)を観たかったのだが…。
2008年公開の、中居正広主演の「私は貝になりたい」(福澤克雄監督<初>)。Amazonプライムにて。
主人公の清水豊松が中居くん、妻が仲間由紀恵、他に、草彅剛、西村まさ彦、武田鉄矢、伊武雅人、泉ピン子、笑福亭鶴瓶、石坂浩二なども顔を揃えている。
中居くん、なかなかの熱演で、キムタクなんかよりも全然良い。主人公の絶望が伝わる。ただ、泣いてるのなら、涙を流そうよ(笑)。
赤紙が届いて召集された、妻と共に散髪屋を営む清水豊松。
内地の部隊に配属された彼は、撃墜されたB-29の搭乗員を、上官の命令で銃剣で突いて殺したとして、戦後のある日、突然、B・C級戦犯として捕虜殺害容疑でGHQの MPに逮捕される。
巣鴨プリズンに収監されるが、裁判では彼の主張は認められずに死刑を宣告されてしまう…。
実際には、元ネタはあるけどフィクションのようだ。
清水二等兵は、虫の息の搭乗員に対し、本部からは「適切な処分をせよ」との命令が下り、上官からは、暗黙の了解で「殺せ」とけしかけられるが、気の小さい清水は殺すことができずに、銃剣で突いても腕を負傷させただけであった。
上官の命令で嫌々やったことで、しかも殺してはいないのに、突然の戦犯指定と死刑の宣告。
本人もGHQへの再審請求と嘆願書を書き、妻も必死で署名を集めて提出したこともあって、減刑になるのではと希望が見えるが、ある日突然の移動と死刑執行が伝えられる。夫が帰って来ると待ち望む妻は何も知らない。
フラフラと絶望の足取りで13階段を昇る。最期の日、清水は遺書を書く。
「もし生まれ変われるとしても、もう人間には二度と生まれたくない。こんな酷い目に遭うのなら、牛や馬の方が良い。いや、牛や馬になっても、きっとまた人間に酷い目に遭わされる。いっそのこと、深い海の底の貝になりたい。どうしても生まれ変わらなければいけないのなら、深い海の底で、私は貝になりたい」。
うつ伏せに近い姿勢で眼だけギョロっとして、一字一字したためる中居くん演じる清水は、虚無と絶望を通り越して、まさに、光が届かない深い海の底にへばり付いてる貝の如き凄まじい様相だ。
このように、当時、冤罪に近い形で理不尽にも処刑された兵士がいたのだろうか?
敗戦というのは、上から下まで、全てが裏切られてしまうことなんだなぁ。