「合衆国最後の日」
「合衆国最後の日(Twilight's Last Gleaming/Das Ultimatum)」(77年・米西独、ロバート・アルドリッチ監督)。
ベトナム戦争から6年が経った1981年、犯罪に手を染めて服役中だった元空軍大佐のデルは、ム所仲間の2人と共に脱獄、モンタナ州にある核ミサイル基地「サイロ3」に侵入して立てこもり、ベトナム戦争に関わる国家機密文書の公開と多額の逃走資金を要求、さらに大統領を人質に取ろうと画策する。
「最後の日」だからブチ切れた犯人が発射ボタンを押して地球滅亡となるのかと思ってたら違った。あと8秒で発射とギリギリまでは行くけど。
画面が分割になって、犯人たちと政府・軍側の焦る様子が同時に描かれてハンパなく緊迫感が盛り上がっていく演出は、古い映画だけど斬新で眼が離せなくなる。ICBMが地上に現れるシーンも真実味と迫力がある。
この映画の要は、後半、軍の幹部が核ミサイルを保持する意味を国の威信にあるなどと議論するシーンで、そのためには国民の犠牲どころか大統領であっても使い捨てできると話すところだと思う。
それに対して激昂する大統領が意外にも誠実な人物に描かれている。
大統領の側近が、日本への原爆投下がなかったら核抑止力が生まれることはなかったという話もしてて、当時のアメリカ政府に対する痛烈な批判にもなってる。
デルら犯人の目的は、ベトナム戦争の意義や国家の利益の真実を国民の前に明らかにすることにあったが、結局、ラストで、デルらは軍の狙撃兵に撃たれて、盾になって歩かされてた大統領まで一緒に狙撃されて、明らかになることはない。軍の、大統領をも撃ってしまうことを想定した作戦だったわけだ。
理想だけでは社会が成り立たないのは充分わかってるが、国の威信って何だろうね。やはり人間をも阻害して守るべきものが国家間のパワーバランスを保つためにも必要なのかもしれない。
すでに古く、扱うテーマが大きいために綻びも目立ち、荒唐無稽なB級感も否めないが、それでも見応えのある面白い映画だった。
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