「山之口獏詩集」
ということで、興味が出た山之口獏の詩集を。
沖縄で産まれた獏は、中学生で女学生と大恋愛の末に許婚の関係になるものの、湧いて来る性欲を抑えた結果、極度の神経衰弱を患い入院、一方的に婚約解消を申し渡されて絶望、その辺から詩を書き始める。
結局、中学は退学となって美術学校に入るために上京するが、約束の父からの送金が一切無くて、野宿を中心とする放浪生活をすることになる…。
食うや食わずの貧乏生活が長く続いたためか、時々の生活や日常、感情を平易な言葉でダイレクトに表した詩が多くて、共感できることが多かった。
時には当時の社会風刺やユーモアも効かせて、クソ貧乏の身ではあったけど、豊かな精神を忘れなかったようで、特に、後年の、奥さんと娘を題材にした作品は、不安定な家庭生活だったけど、小さな“幸せ”が手に取るようにわかって微笑ましくなる。
彼は沖縄出身だから、沖縄を題材にした作品が多いけど、戦時であっても、体験から来る社会の隅っこを見つめる視点は、ヒネておらずに温かいのだ。
高田渡氏が歌にした有名な(俺は知らなかったが(^^;;)「生活の柄」。↓
「歩き疲れては、
夜空と陸との隙間にもぐり込んで寝たのである
草に埋もれて寝たのである
ところ構わず寝たのである
寝たのであるが
ねむれたのでもあったのか!
このごろはねむれない
陸を敷いてもねむれない
夜空の下ではねむれない
揺り起されてはねむれない
この生活の柄が夏向きなのか!
寝たかとおもふと冷気にからかはれて
秋は、浮浪人のままではねれむれない」
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脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。