「昼顔」

大好きだったルイス・ブニュエル監督の、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の名作「昼顔」(1967年)の原作本を格安ゲット。ジョゼフ・ケッセルの代表作だ。

映画の内容はほとんど忘れているが、小児科医の夫ピエールの妻として、貞淑に夫を深く愛しつつも、昼間は、夫に内緒で、売春宿で客の男たちに身を売っているセヴリーヌの物語だ。

セヴリーヌは「昼顔」という源氏名で客の相手をするが、日本でも、昼顔(午後3時の妻たち)は不倫の代名詞みたいになってたよね。

1929年の小説だから、直接のエロティックな描写はないけど、まだ若いセヴリーヌが持ってるマゾヒズム的な性衝動と、貞淑な妻という社会的理性との間での葛藤、果ては性衝動に負けて、衝動的に売春宿の門を叩いてしまう等の女性心理がシツコく描かれている。作者は男だけどね。

客に身を売り欲情の虜となりながらも、夫ピエールの事を想い、快感を得る自分に恐怖するような、揺れ動く内面を書いた心理小説だな。

そして、思った通りにトラブルからスキャンダラスな終焉へ。

客の一人にシツコく言い寄られて、夫ピエールの知人に秘密がバレて告げ口されそうになって、ストーカーと化した客が、セヴリーヌの自宅を突き止めて押し入り、彼女は留守だったけど、夫ピエールが、その客に銃撃される。彼はその後遺症で全身麻痺になってしまう。

でも、セヴリーヌの昼顔としての顔はバレない。貞淑な妻として終わるのだ。

男は、精神と肉体を容易に分けることができるけど、女は精神と肉体がほぼ一緒。コレが男女のトラブルの大きな要因だと思うけど、セヴリーヌの場合、肉体に精神が負けてしまったのだな。


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TOMOKI
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。