【邦画】「どですかでん」

この映画は面白かった。

黒澤明監督の、1970年公開の「どですかでん」。

クロサワさん、初のカラー映像。

頭師佳孝演じる頭の弱いと思われる青年、六ちゃんが、電車の運転手になりきって移動しながら口ずさむ「どですかでん、どですかでん」(電車の走る音)が耳に残って、マネしたくなる。

場末の、隅にゴミが積まれたスラム街のようなところで、出演者は全員、アウトサイダー。

自分が電車の運転士だと思い込んでる六ちゃんといつもお経を唱える母ちゃんの他、飲んだくれの労働者もいれば、いつも井戸端会議をしてる女たちもいる。妻を交換するスケベな夫もいる。家を建てる夢を話すホームレスの親子もいる。いつも無表情で無言の中年オヤジに大家族、姪の娘を暴行するアル中クズオヤジもいる。顔面神経症のサラリーマンに、泥棒に金をあげる悟ったような優しい職人の老人もいる。

つまりは、ココに暮らす人たちは全て変わったオカシイ人たちばかりなのだ。その人たちの間を六ちゃんが毎日、「どですかでん」と電車を運転してる気になって通り過ぎるのである。

薄汚れたアウトサイダーたちの、ユーモラスかつシュールな感じのファンタジックな寓話みたい。ゴミの街の色褪せたような色彩も美しい。

クロサワさんらしい演出も随所に。クロサワさんの人間讃歌だね。興行的には大失敗だったらしいが、俺は好きだ。

「日本人は開けっ広げの明るさよりも、柔らかい光を好んで陰のできる場所を選んだんだ。つまり自然に抱かれて生活するのが好きなんだ。だから石で建てた家にはなかなか馴染めなかったんだよ」byホームレスの親子


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TOMOKI
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。