「恋のかけひき」
古い10円文庫本だけど、へ〜、澁龍訳で、マルキ・ド・サドの短編集なんてあったのかぁ、と思って読んだら、コレ、確かに前にも読んだぞ、と思い出した。
どれも、昔のフランス文学らしく前口上があって、サドらしく不道徳や悪徳、エロスを全面に出すというわけではなく、当時の男と女の日常の風俗を、ウィットとユーモア、風刺を交えて描いた、軽い読み物って感じだ。
ただ、最後の「司祭と臨終の男との対話」は別で、サドの思想が全面に出た“無神論宣言”みたいな作品であり、これこれ!これぞサドや!と小躍りしたくなるようなスリリングな短編である。
自然の本質を悪として、神という存在を人間の敵と見るのだ。
「私は、自然によって、たいそう強い嗜好と盛んな情欲とを与えられて、この世に生を亨け、もっぱらそれらの嗜好に耽溺し、それらの情欲を満足させるために生きていたのでした。
これらの欲望は、自然の第一目的に付帯した必然的結果、自然が自然の法則によって、私という一個の人間に賦与したものの本質的な傾向とでもいうものに他ならないのです。
私にとっての唯一の憾みは、自然が私のために授けてくれた諸々の機能を存分に役立たせ得なかった点にあります。
あなた方聖職者輩の馬鹿げた教義にすっかり目をくらまされていて。
それを私は今、後悔しているのです」…。
脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。