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「フェイズIV 戦慄!昆虫パニック」
邦題タイトルがダサいけど、「フェイズIV 戦慄!昆虫パニック(Phase IV)」(74年・米)。
監督はアメリカでは有名だったグラフィック・デザイナーのソウル・バスで、最初で最後の監督作品。
昆虫が人間を襲う単なるパニックものじゃなく、デザイナーの監督らしく、アートな雰囲気の映像がいっぱい出てくる不思議な作品だ。
アリンコが天変地異の影響で知性を得て、研究する科学者らを支配しようとする物語。
アリンコの、どアップで撮られる生態や幾何学パターンを認識して人間とコミュニケーションを取ろうとする能力、人間が作ったドーム型研究所を巨大な整った配列の蟻塚で囲み、太陽の光を反射させて襲ってくる様子など、BGMの重厚なシンセ・ミュージックが流れる中、アートなビジュアル・イメージを全面に出した前衛的ともいえる作品だ。
まず、アリンコのどアップ映像が気持ち悪い(笑)。動き回る触角や何重にも見えてる様な複眼、鎌の様なアゴ、薄っすらと生えてる口ヒゲ等を、これでもかと接写で見せられる。生物の神秘を感じる前に、足下にこんなのが動き回ってると思うと恐ろしくなる。
アリンコが人間との闘いで死んだ仲間を穴蔵の中で一列に並べるところなどリアルで、知性は決して人間だけが持つものではないと思わせる映像だ。
人間が駆除剤を撒いても、新種はカラダの色を変えて、化学薬品にも適応した新種となって人間を襲う。人間もコンピュータで弾き出したホワイト・ノイズで蟻塚を破壊する。
最初の方で、付近にあった一軒家がアリンコの集団に襲われるのだが、隠れてて奇跡的に生き残って救出された若い女が、めっちゃカワイイのだけど、最後に、アリンコの巣に導かれて覚醒して、太陽を仰いで女王の様に振舞うシーンがある。70年代当時の精神世界、サイケデリックなカルチャーを暗示してる様でもある。
アリンコの襲来で人類に終末が訪れるとともに、新たに誕生した女王の下、次の未来が到来する…新世界の誕生の予感。今でいうと、新型ウィルスの蔓延で人類に終末が訪れるとともに、旧世界の駆逐と新たな価値概念を持つ新世代の登場…と言ったら言い過ぎか。
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