「ラディゲの死」
著者、17歳から31歳にかけて書いた短編集。
まだ、“行動の人”ではなかったので、内にこもって、言葉をフェチ的に駆使した芸術至上主義のようで、著者にしては青臭い。
しかし、後の、死と肉体への憧憬の萌芽は充分に認められる。
最初に読んだ時もそうだったが、中でも、「日曜日」の、恋人同士の首が線路の砂利の上にキレイに並ぶのは、著者らしくて相変わらず素晴らしい。
腸チフスで死んだ妹が幽霊として現れる「朝顔」も不思議な一品だ。
最も、この短編集のカラーにピッタリの表題作は、「三日のうちに、僕は神の兵隊に銃殺されるんだ」と言って20歳で夭折したレイモン・ラディゲの最期を書いたもので、「言葉さえ美しければいいのだ」と信じる著者の、読者をも拒絶するような頑なな態度を思わせる。
この後、ギリシャの太陽に出会って、フェチは言葉から肉体へと変化するわけだが。
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