「アシュラ」上下巻
さて、次にゲットした故・ジョージ秋山先生の衝撃的傑作漫画「アシュラ」。1970〜71年の「少年マガジン」に連載。
先に観たアニメ映画と違って、忖度なく、飢餓や人肉食(カニバリズム)、人間の深い業など、凄惨な場面でも徹底的に描いており、ラスト、アシュラが「生まれてこないほうがよかったのに…」と呟いて、夢も希望も全くなくて、素晴らしく面白い。
太夫に捨てられ狂った母親に産み落とされ、母親が食べるために火にくべられながらも助かり、ただ生き延びるためだけに人肉食に手を染めた餓鬼アシュラは、罪悪感を抱くこともなく、本能のおもむくままに行動する、不合理・不条理の不死身の餓鬼なのだ。
誰もが飢えている極限の状況では、道徳も正義も恋愛も情も理性も吹き飛び、アシュラをはじめ、登場人物の多くに、現世に生きることを呪う言葉を吐かせている。そして、その状況下では、アシュラだけが正直に生きていることになるのだ。
放浪の乞食坊主がいう。
「確かに、人間の本性はケダモノじゃ。誰でもケダモノになってしまう時がある。ケダモノになった人間を責めても仕方があるまい。人間の哀れを思うことじゃ。ケダモノと戦え!お前の中にあるケダモノと戦うんじゃ。それが人の道じゃ。人を憎むな、己自身を憎め!己のケダモノを憎め!」
白土三平先生の「カムイ伝」よりもショッキングだな。
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