【映画】「プリシラ」
1994年のオーストラリア映画「プリシラ(The Adventures of Priscilla, Queen of the Desert)」(ステファン・エリオット監督)。
オーストラリア・シドニーで興行を行うドラッグ・クイーン3人が、大陸の中心地・砂漠の町のホテルで行われるショーに出演するために、急遽、入手したバス「プリシラ号」に乗って3,000㌔を旅するというロード・ムービーだ。
道に迷ったり、バスが故障したり、砂漠の真ん中でガス欠になったり、現地人アボリジニと出会って交流したり、保守的な町で住民に攻撃されたりするけど、3人の女装に至った経緯や思い、家族のことなどが明らかにされていく。
ドラッグ・クイーン3人のド派手な衣裳と、荒涼とした砂漠と田舎町の風景との対比がまた面白い。
性の垣根を超えて、異形の存在として、とことん化粧を施し、原色でハデに着飾った3人は、何処に行こうともスタイルを変えることもなくて(途中、迷って普通の格好になるが)、とても力強いね。
中でもアソコをちょん切ったリーダー格のバーナデッドはドラッグ・クイーンとなった自分に誇りを持ってる。途中から同行した元ヒッピーの修理屋の男ボブが、彼(彼女)に性を超えた人間として好意を寄せるし。
ドラッグ・クイーンって、ボディビルが決して健康のためではなく、大きな筋肉を纏うことで人間を超えた異形の存在になるためであることと似てる。一種の変身願望の現れなのか。ディヴァインのように。
俺も、人間として見たいけど、どうしても性を意識せずにいられないから、古臭い昭和の価値観ではダメだ。動物界でも皆、女性で生まれて成長していく過程で男性に変わる例が多いから、本来なら生物は女性なのかも。男は稀な突然変異ということだ。だから、ゲイは生物の本来の形に戻ることなのかもしれない。
ドラッグ・クイーンのひとり、ミッチは興行先のホテルで別れた妻と息子が待ってることを知って不安となって、ドラッグ・クイーンであることを隠そうとするが、息子はレズビアンとなってた妻から聞いて知ってて、ゲイであることをちゃんと理解してたというオチも。
いろいろと心が疲れた時に観ると彼(彼女)の人間臭いたくましさに元気をもらうかも。
高度に進化した人間ならば、男女の他に男・男、女・女、男・物、女・物、老・若、自分・自分…性の形はどんなものでも自由だ、本来なら。ただ社会的規範とどう折り合いを付けていくかだな。