【洋画】「カティンの森」

2007年のポーランドの映画「カティンの森(Katyń)」。

監督は、「地下水道」「灰とダイヤモンド」などの、メッセージ性の強い政治的レジスタンス映画でお馴染みのアンジェイ・ワイダ。

監督の父親も犠牲者となったという「カティンの森事件」を題材としたものだけど、監督が高齢となった(←失礼!)晩年の作品だからか、なんかゴチャゴチャしてて、期待した割には面白くはなかったなぁ。

「カティンの森事件」とは、第二次大戦中に、ソ連のポーランドに近いところで、約2万人以上ものポーランド軍将校らが、ソ連の特務機関に虐殺された事件。ソ連の長官ベリアが射殺を提案して、スターリンらの決定で実行された。ソ連がポーランドに侵攻して、ポーランド東部地区を併合、多数のポーランド人捕虜をソ連領内に連れ帰って虐殺したわけだ。当初、ソ連の盛んなプロパガンダもあって、ソ連に侵攻したナチスドイツ軍によって虐殺されたと思われてたけど、ゴルバチョフ、エリツィンの時代に真実が明らかになったのだ。

個人的なストーリーを織り交ぜながらも、概ね史実に沿ってると思うが、後半の、大戦終結後、ソ連の衛星国として復興を始めたポーランド内で、カティンの森事件はドイツ軍の仕業であると宣伝されて、真相を知ってる市民は逮捕・迫害され、事件の真相に触れることはタブーとなる過程が興味深いね。

大国に左右される自国ポーランドの名誉回復の意図もかんじられるくらいに、時折、実写フィルムも交えながら、真実にこだわってタブーだった事件に斬り込むワイダ監督の姿勢には敬服するしかないが、共産主義国家ソ連の、初の、公になった国をあげての蛮行じゃないだろうか。

ラストの、何の感情も出さずに、トラックから降ろしたポーランド軍将校らの頭を、次から次へと銃で撃ち抜いていくシーンは、本当に単なる“処理”で、どれだけ無駄に命が散っていったのか、ワイダ監督が訴えたいこともココに集約されてるかもしれない。娯楽性は全くなくて、面白くはない映画だけど、とても暗くて衝撃的だ。

近代の戦争で、一方が正義で、一方が悪という構図はほとんどないといっていいと思う。まず、出て来る情報はプロパガンダか、一部を切り取ったものだし。メディアなんかアホゥな大衆向けに意図して情報操作するものだ。

過去の歴史から学ぶことも大きい。


脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。