「消された一家」
前に、単行本では読んだけど…。
事件は詳しく知ってて動画でも見てるが、映画や小説などが霞んでしまう程の凄まじい犯罪ノンフィクションだ。
まだ、サヨク・イデオロギーに則った連合赤軍リンチ事件の方が生優しいかも。
イヤ〜、凄まじい…、凄まじいしかいえない。
松永太現死刑囚は、簡単にサイコパスなんていえない程の、モンスター級サディスティック天才鬼畜詐欺師・殺人鬼で、自分じゃ手を汚すことなく、洗脳した7人、家族全員から金を奪って、それぞれ殺し合いをさせたのだから。
裁判記録等をもとに10年以上に及ぶ戦慄の凶行の詳細を記したもので、一気に読んだけど、気持ちが悪くなってきたよ。
松永が、最初に取り入って奴隷にしたのは緒方純子(現無期懲役囚)だけど、出会った当初は、とても優しく接して冗舌に夢を語ったりしているが、結婚した途端に豹変、何かと理由をつけて暴力を繰り返し振るって痛めつけることで、バタードウーマン(DVの被害者)にし、純子自らが社会的倫理原則を侵犯して、自ら人間関係の繋がりを裏切るように仕向けている。
そして、次に緒方家全員に眼をつけて、一人一人、同様の手法で洗脳している。
金を得るためとはいえ、特別に心理学などを勉強したわけでもないのに、ある意味、本能的に、このような手法を実行できるなんて、松永は犯罪においてはやっぱり天才かもしれない。犯罪じゃなく、他のことに使えば…とはよく言われるが、犯罪だからこそ才能が開花したのだと思われる。
松永本人が裁判で語るには、「私はこれまでに起こったことは全て、他人のせいにしてきました。私自身は手を下さないのです。なぜなら、決断をすると責任を取らされます。私の人生のポリシーに自分が責任を取らされるというのはないのです。私は提案と助言だけをして、旨味を食い尽くしてきました。もし、責任を取らされそうになったらトンズラすれば良いのです。常に展開に応じて起承転結を考えてます」という。
松永の、最大の目的は、金を搾り取れるだけ搾り取ることだが、緒方家に取り入って洗脳してそのように仕向ける大きな材料となったのは、電気コードの通電による虐待だ。
狙いを定めた人間に、日に何回も通電を繰り返す。通電理由はほんの些細なことばかり。しかも緒方家の人間にやらせるのだ。
このような虐待や生活制限を受けてたことで、緒方家の人々は「学習性無力感」に陥っていく。
通電をはじめとする虐待を受け続けたことで、逃亡も不可能だと学習し、無抵抗になっていく。そして、逃亡のチャンスがあったとしても、自ら閉じこもり、絶対的受け身の態度に徹することになるのだ。
しまいには、松永への忠誠心が生まれ、それは、いつ自分の命を奪うかもしれない彼への過剰な依存心に転じてる。強制収容所のユダヤ人と一緒。まさに“廃人”である。
松永は、監禁した緒方家の人間をランク付けして(常に変わる)、最下位の人間には虐待を加えて最終的には殺した、いや殺させたのだ。全部で7人。
遺体は、血を抜いて、解体して、煮込んで、溶かして流す。松永がいうには「つくだ煮を作る要領」であり、「設計士がビルを建てるのと同様、解体の企画・構成に携わり、プロデュースした」という。
松永の餌食となった人間は、純粋な性格だがイタい、そこそこ裕福…。こうしたターゲットに松永は容赦ない。絶対服従の奴隷にして金を巻き上げ、気紛れでランクを入れ替え、最下位にいる者には過酷な虐待を加える。それを楽しんでやってたみたいで、やっぱりその快楽はサディスティックなものだろう。
裁判の場は、松永のステージで、答弁を聞いていると、まるで漫談を聞いてるかのような錯覚に陥ることが多々あったという。
凶悪事件の公判であるのにも関わらず、彼が話し始めると、一気に緊迫感がなくなり、傍聴者や取材関連、検察官や弁護人まで爆笑することが多かったというのだ。答弁の内容は自分の正当化と無罪を訴えるものだけど。
こういう人間が育った環境はどのようなものだったのだろうか?親はどう育てたのか?どうしたら、こんな人間ができるのだろうか?
緒方純子は、長い年月に渡って耐え難い苦痛を体験してるので、現実が現実でない感覚に襲われたり、所々、記憶が喪失したりしてる。“解離症状”だが、拘置所・刑務所に入って、ようやく松永の呪縛から逃れることができて、自分が手をかけた被害者の冥福を祈りつつ、いろいろと謝罪の手紙を書くことで、これまでの失った人生を取り戻しつつあるようだ。
人間とは、暴力によって、いとも簡単に操られて殺人も厭わなくなるみたいだね。やっぱり世間体とか対外的な見てくれを意識してしまう人にそういう傾向が強いようだ。つまりは自分というものを持ってないということは、メディアであっても洗脳されやすいといえると思う。
個よりも共と和を重んじる日本人は、もちろん良い面もあると思うけど、一方で極端なカルトに靡きやすい傾向にあるといえるかもしれない。政権政党からしてそうだから。←飛躍しすぎ?