【邦画】「放浪記」
成瀬巳喜男監督の、1962年の「放浪記」。
林芙美子の自伝的小説を原作としたもので、同じ林芙美子原作の映画「浮雲」(1955年)がメッチャ素晴らしかっただけあって、コレも2時間、飽きさせない傑作だった。
フミコを演じたのは高峰秀子で、ダメな男に翻弄され貧乏を強いられながらも、飄々とした女無頼派って感じで、逞しく文筆に生きる女性を演じる。
貧しい行商人の娘だったフミコ。
カフェの女給をして生計を立てているが、書くことが好きで、暇があれば、本を読んで、詩や童話を創作する。
やがて、同人誌の仲間となるが、フミコが結婚した作家の男は大した収入もなく、フミコの収入で生活するようなクズで、彼女の詩が新聞や雑誌に載っても、貧乏と縁が切れない。
男と別れたフミコは、今までの苦労を「放浪記」として作品にして発表、彼女はようやく文壇に第一歩を踏み出す…。
自分を捨てた初恋の男から、フミコにたかるだけのイケメンのクズ、彼女の作家としての小さな成功を妬み暴力を振るう作家…とホントに男運が悪い、というよりも、フミコは、クズばかりを好きになる。
文壇の世界は、太宰治のような弱さを武器にした男ばかりで、鼻っから生活力が皆無。ゆえにラストまで、貧乏神が付いてまわる。
最初に下宿先で隣に住んでたバツイチの中年男と、最後の画家だけはフミコを助けてマトモだが。
行商人、女工、女給などの職を転々とするが、酷い貧乏にもめげずに、あっけらかんとした表情がとても魅力的で、女給では、歌って踊ったり、理不尽なことを言うジジイ客をどやしつけたりと痛快だ。
フミコの作品は、真実の体験からのもので、「ゴミ箱の中のゴミを棒で突っつきちらしてぶちまけたようなような作品。でもゴミの中に嘘偽りのない真実の美しさを見出した」と評される。
作家として成功したフミコだが、身を削っても、不眠不休で書き続ける。人間とは、美徳を後ろ盾にした、浅ましい存在であるから、世間にスキを見せずに書き続けることで、誠を示すように。
極貧生活を体験し、貧乏ゆえに歪になった人間を多数見て来たフミコだからこそわかるのだろう。
「花のいのちはみじかくて、苦しきことのみ多かりき…」
「世の中には身内もなければ他人もない。生まれてくる時も独りだし死ぬ時も独り。自分で自分を助けないと誰が助けますか」
最初は、貧乏を売り物にする、次は、成り上がり、そして、政府お抱え小説家など、いつも批判の的になったという林芙美子は、最後は、悲しみをただひたすらに書きつづけた波乱万丈の人生だった。47歳、心臓麻痺で突然死している。
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