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恋愛小説が好きな理由は、「生を感じられる」からだと思う。

昨日、千早茜さんの「神様の暇つぶし」を読みおわった。恋愛の生々しさが美しく昇華された作品だった。お昼過ぎから読んで、気が付くと夕方。夕飯の支度とかをすっとばして、夢中になって読んでしまう本はとても良い本だと思う。

昔から恋愛小説が好きだった。ミステリーも歴史もSFも読んでいるけれど、多分恋愛小説が一番読んでいるのではないかな?特に山田詠美さんと江國香織さんの作品は、誰もが通る道だと思うけれど、大好きで、中学生のときに読み込んだ。

小学生や中学生、高校生ぐらいの多感な時期は、『憧れ』として読んでいたのだと思う。(恋愛をしたことがない小学生の時に、失恋に憧れて失恋ものの話ばかり読んでいた)

40代の今、悲しいけれど『憧れ』はあんまりない。まったく憧れないわけじゃないけれど、恋愛をしたいと思っているかというと、(あんまり大きな声じゃいえないけれど)「面倒くさい」が先に立ってしまう。

じゃあ、なんで読み続けているのか?この前読んだ、川村元気さんの『四月になれば彼女は』(映画じゃなくて小説の方)の中にとても納得のいく言葉があった。

生きているという実感は死に近づくことによってハッキリとしてくる。この絶対的な矛盾が日常のなかでカタチになったのが恋の正体だとボクは思う。人間は恋愛感情のなかで束の間、いま生きていると感じることができる。

川村元気『四月になれば彼女は』より

10年前に乳がんだとわかったときに、『死』を意識するのと同時に強烈な『生』を感じるという経験をしているのでとても共感した。『死』の正体を目の前で見てしまうと、『生』を感じずにはいられなくなる。ただ、それはとても寂しさが伴う『生』だった。タイムリミットがある『生』は満喫するよりも味わうものだ。

一方、恋愛は『死』を意識しなくてもタイムリミットがなくても『生』を素味わえる。恋愛をしたことがある人ならわかると思う。草木が空が建物が、全てがキラキラして見える。あの人に会える、それだけで体中の血液が湧きたつ。今まで感じたことがないような高揚感。心と身体の輪郭がはっきりするあの感覚。

短くて儚いものだけれど、確実に『生きている』と感じられる。あの瞬間の恋愛がとても好きだ。その瞬間を上手く切り取っている恋愛小説は、疑似的に前向きな『生』を私にくれる。

だからきっと好きなのだと思う。

本を読み続けてしまうと、生活に支障が出るタイプなので気をつけなくちゃいけないけれど、なかなかこなかった秋の夜長には、やっぱり本を読みたい。この恋愛小説はオススメですという本があれば教えてもらえるとうれしいです。


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