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知識はコミュニティの中に 『知ってるつもりーー無知の科学』(2)
まずは本文の引用から。
人が自分の頭のなかだけにある限られた知識と、因果関係の推論能力のみに頼っていたら、それほど優れた思考を生み出せないはずだ。
人類が成功を収めてきたカギは、知識に囲まれた世界に生きていることにある。知識は私たちが作るモノ、身体や労働環境、そして他の人々のなかにある。私達は知識のコミュニティに生きている。
今までの知識観からすれば、この考えは突飛すぎるものかもしれない。なぜならば学校教育で評価する「知識」は、すべからく一人の人を対象として、その頭の中に記憶したことや、計算や推論する能力を計測しようとしている。つまり、「個」の能力を指しているのだ。
しかし、認知科学の研究が進めば、現実はそうでないことがわかってくるばかりだった。
ちょうど80cmくらいの高さの棚や机は、私達を座らせるだけの十分な魅力を放ち、ドアノブも私達の手に、それを回すことを促す。
自分の周囲の人達の多くが、「地球の周りを太陽や月が回っている」と確信して疑わないなら、なんだかそんな気を催す。
逆に「地球が太陽の周りを回っている」様を目の当たりにしていなくても、私達は地動説の論者となることもできるのだ。
私達はいろいろな人の間で暮らしている「人間」だからこそ、「無知」と「錯覚」は避けることができないのだ。
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