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孤独な研究者の夢想

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認知科学研究・最近読んだ本・統計など研究に関係することを書きます。
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#計画錯誤

「最悪の事態」を考えれば、正確に計画を立てられるのか?(3) ー計画錯誤と悲観的シナリオー

前回までの記事では、ベストケースに基づいて課題の時間を見積もる「楽観バイアスがいかに強いかが実験の結果によって示された。 今回は、残す二つの実験、実験4と実験5を紹介する。 実験4実験3までは、「ベストケース」、「最悪のケース」、「現実的ケース」の3パターンのいずれかを考えさせる実験や、複数のシナリオを考えさせる実験を行い、楽観バイアスがいかに強いかを示してきた。 そして、「最悪のケース」が最も実作業時間に近かったことが示された。 しかし、今までの実験では常に「ベスト

「最悪の事態」を考えれば、正確に計画を立てられるのか?(1) ー計画錯誤と悲観的シナリオー

人は自分がこれからしようと考えていること、例えば料理や仕事にかかる時間を見積もると、 必ずと行っていいほど「楽観バイアス」が働いて、無意識のうちに楽観的に見積もり、実際に掛かる時間は見積もった時間を超えてしまう、 「計画錯誤(Planning Fallacy)」という傾向について以前書きました。 様々な分野、折り紙からソフトウェア開発まで、時間の見積もりを研究していった結果どの分野にも共通して引き起こされるこの傾向は面白い結果を呼びました。 今回は、この「楽観バイアス

折り紙からソフトウェア開発まで ー私達につきまとう「計画錯誤(Planning Fallacy)」

私たちは、何かをする時ぼんやりと「どのくらいの時間がかかりそうか」を見積もっている。 日常にありふれた「計画」 例えば、朝起きて家を出るまでの時間を思い出してみてほしい。 髭をそって顔を洗って、朝食を食べて、食器を洗って、歯を磨いて、着替えて、ゴミを確認して、といった具合に手順は簡単に思い出せるだろう。さらに、毎日行っているこれらのルーティンに関しては、だいたい髭をそって顔を洗う時間は10分程度、朝食には30分程度、といった具合に時間配分も正確にすることができる。 しか