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孤独な研究者の夢想

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認知科学研究・最近読んだ本・統計など研究に関係することを書きます。
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#人を伸ばす力

知的好奇心と生涯遊び学ぶ人 『知的好奇心』

日本人にも『人を伸ばす力 ー自律と内発のすすめー』の著者、エドワード・デシ教授と同様にして「知的好奇心」の研究を行い、世界的な業績を挙げてた研究者がいた。それは波多野誼余夫先生だ。 基本的にはデシ教授が言うこととかわりがない。統制ということばの代わりに「疎外」という言葉を活用しているが、デシ教授の文中にも「疎外」という言葉は登場し、統制されたときに陥る子どもの状態のことを「疎外」という言葉を使っているため、同じ意味で言っているに違いない。 波多野誼余夫先生が生前著した名著

統制するのではなく自律性を支える 『人を伸ばす力 ー内発と自律のすすめー』(2)

『人を伸ばす力 ー内発と自律のすすめー』の著者であるエドワード・デシの研究から、「外的な報酬が与えられることによって、内発的動機づけが破壊される」ことがわかった。 そして、デシ教授は内発的動機づけがなぜ「外的な報酬」(例えば金銭的報酬など)が与えられると、破壊されるかということについて考えた。そのときに挙げたキーワードが「自律」と「統制」であった。 自律人は自分の内側から湧き出す要因によって、活動するとき「内発的動機づけ」(人が生まれつきもっている活力、自発性、純粋さ、好

「目的を達成したい」は内発的動機づけなのか? 『人を伸ばす力 内発と自律のすすめ』(1)

最近よく聞く言葉は「君は何がやりたいんだい?」ということだったり、「どんなことを達成したいんだい?」という質問だ。 その中でも自分から一度「絵を描きたい」と子どもが言い出せば、絵画教室に通わせ、「医者になりたい」と子どもが言い出せば、医者なるためには、あの名門中学校に行く必要があるから、という理由で受験塾に通わせる。 子どもが自分から発言した「目的を達成したい」は内発的動機づけと言えるのだろうか? まず、内発的動機づけとは真反対の概念である、「外発的動機づけ」から考えて