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孤独な研究者の夢想

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認知科学研究・最近読んだ本・統計など研究に関係することを書きます。
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#遊び

遊びと行為の喜び 『フリープレイ 人生と芸術におけるインプロヴィゼーション』

前回の記事でご紹介した笛吹の寓話。 そこでは、若き笛吹の弟子は「承認されるため」や「師匠からの期待に答えるため」や「恥をかかない」ために演奏をしたときに、 「なにかが足りない」状態に陥りました。 しかし、得るものも失うものも、何もなくなった瞬間に本当の意味での演奏、すなわち「プレイ」が起こったのです。 遊び〈プレイ〉こそが創造的活動の源泉 『フリープレイ 人生と芸術におけるインプロヴィゼーション』の著者、ナマハノヴィッチは、その中で創造の源泉は、遊び〈プレイ〉のこころ

笛吹きの寓話と達人 『フリープレイ 人生と芸術におけるインプロヴィゼーション』

「自由な遊び〈フリープレイ〉」と創造性の源泉や創造的なブレイクスルーについて考えることは、「創造」を考えるために役に立つのではないだろうか。 スティーヴン・ナハマノヴィッチ著の『フリープレイ 人生と芸術におけるインプロヴィゼーション』では、冒頭に日本のある昔話を紹介している。 それは、こんな話だ。 中国で発明された新しい笛を持ち帰った、ある日本の音楽の達人がその音の美しさに惚れ込み、みんなに聞かせました。 ある町でコンサートをしたところ長老から「まるで神のようだ!」と大

知的好奇心と生涯遊び学ぶ人 『知的好奇心』

日本人にも『人を伸ばす力 ー自律と内発のすすめー』の著者、エドワード・デシ教授と同様にして「知的好奇心」の研究を行い、世界的な業績を挙げてた研究者がいた。それは波多野誼余夫先生だ。 基本的にはデシ教授が言うこととかわりがない。統制ということばの代わりに「疎外」という言葉を活用しているが、デシ教授の文中にも「疎外」という言葉は登場し、統制されたときに陥る子どもの状態のことを「疎外」という言葉を使っているため、同じ意味で言っているに違いない。 波多野誼余夫先生が生前著した名著