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孤独な研究者の夢想

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認知科学研究・最近読んだ本・統計など研究に関係することを書きます。
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#直感

(ときには)過ぎたるはなお及ばざるがごとし(2) 『なぜ直感のほうが上手くいくのか?』ゲルト・ギーゲレンツァー著

5/15の記事では、情報が少ないほうがより意思決定も上手くいく5つの場合のうち、始めの2つを紹介した。 「ヒューリスティックス(Heuristics)」の働き5パターン 1.役に立つ程度の無知 再認ヒューリスティックが良い例だが、直感はかなりの量の知識と情報を凌ぐ働きをする。 2.無意識の運動スキル 熟達したエキスパートの直感は無意識のスキルに基づいているため、考えすぎるとスキルを発揮できなくなることがある。 3.認知限界 私たちの脳は、忘れたり、小さく始めたりといっ

(ときには)過ぎたるはなお及ばざるがごとし(1) 『なぜ直感のほうが上手くいくのか?』ゲルト・ギーゲレンツァー著

『なぜ直感のほうが上手くいくのか?』ゲルト・ギーゲレンツァー著 直感のほうがうまくいく時はどんな時なのか、そのときに私達が判断する「経験則」とは何なのか、ということに切り込む書だった。 まずは「直感」「直観」「勘」の違いを明確にしたところで、 それぞれの違いがあることがわかったものの、この本のタイトル「直感のほうが上手くいく」ときは、どんな場合なのだろうか、という疑問が頭に浮かんでくる。 著者は、この本の第二章「(ときには)少ないに越したことはない」で、下の5つのパタ

私たちに芽生える素朴理論

今回は、私たちが日常生活を送っていく中で発見し、いつも作り上げている「素朴理論」について、考えてみる。 素朴理論をあぶり出す調査 まず、下の問題を、その先を見ずに考えて欲しい。 この写真のaの点、bの点、それぞれにどのような力がかかっているだろうか。 この問題、ハーバード大学の学生に出題され、下記のような回答が80%を超える結果になった。上昇しているときは上向きの力がかかり、下降している時には下向きの力がかかる、というモデルだ。 ただ、科学的に考えると、下のようになる