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初恋リベンジャーズ・第四部・第3章〜最も長く続く愛は、報われない愛である〜①
金曜日に男女バスケットボール部への訪問を終えたオレと緑川は、週が明けた月曜日の放課後、シロに報告を行った。
自分のアドバイスが役に立ったことが嬉しかったのだろうか、彼女は、笑顔で結果報告に対する感想を述べる。
「わたしの考えたルーティーンが、うまくハマったみたいだね。LANEのIDも交換できたみたいだし、あとは、どうやって、彼女をデートに誘うか、だね!」
「それなら、もうクラブ訪問をする必要も無いよな? 緑川が登校してきて、ちょうど、一週間が経ったし、オレはもうお役ゴメンってことで良いか?」
クラスメートの二人に確認すると、緑川は、すがりつくような目で訴えかけてきた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! たしかに、LANEの連絡先は交換できたけど、ここから、どうやって、山吹を誘えば良いんだ?」
この日のバスケ部の訪問時も含めて、一週間のあいだ、あれほど自信に満ちた表情で女子生徒にルーティーンを仕掛けていた姿をそばで見てきたオレには、そんなクラスメートの焦り具合が意外なように感じられる。
それに、シロの言うように、クラブ訪問で女子に声をかける必要はなくなったのだから、『ツカミ』のルーティーンのための小道具も不要だと思うのだが……。
ゲン担ぎのつもりなのだろうか、緑川は、今日も胸元にクジャクの羽根のアクセサリーを付けている。
「もう、LANEでのやり取りになるんだから、オレがそばに居る必要はないだろう? そろそろ、広報部の活動に戻らないといけないし、放課後に時間は割けないぞ?」
ちょっとドライかも……と思わなくもないが、そもそも、ユリちゃん先生から頼まれた、緑川の登校という当初の目的は達成しているので、これ以上、自分がやるべきこと、そして、できることは無いと感じる。
「い、いや、そう言わずに……」
なぜ、緑川武志が、ここまでオレにすがってくるのかわからず、
「う〜ん、そう言われてもなぁ……もう、これ以上、オレにできることは……」
と、やんわりと断りを入れようとすると、ここで、もう一人のクラスメートが会話に割って入ってきた。
「LANEで、コミュニケーションが取れるようになったから……ここからは、女子のココロを掴むLANEの使い方をレクチャーしていこうと思ったんだけどなぁ〜。あと、まえに話した『孔雀の理論』には、まだ続きがあるんだけど……クロは、そういうことには、興味ないの?」
挑発的とも言える不敵な笑みを浮かべながら、シロが、オレに問いかけてくる。
「そりゃ、まったく興味が無いという訳じゃないが……」
そう返答したものの、オレにとって、どれだけのメリットがあるかわからないことに、これ以上、深入りすることは避けたいという想いも強い。
「それじゃ、もう少し、緑川クンに付き合ってあげようよ。わたしも、できる限りの協力はするから」
熱心な表情で語るシロに根負けし、オレは、渋々ながら首をタテに振る。
シロによると、「今後の攻略方法は、また今度ね!」ということなので、緑川とともに、広報部の部室に向かうことにした。
部室に向かう途中、何人かの男子生徒の姿に目を向けながら、オレは、妙なことに気づいた。
「なぁ、緑川……気のせいかも知れないが、いま、男子とすれ違ったとき、変な感じがしなかったか?」
「えっ、そうか? すまない、良く見てなかった」
オレが感じ取った違和感は、クラスメートには伝わっていないようだ。
(まあ、オレの気のせいか……)
と、感じながら、部室に入ると、先週とは異なり、一年の佐倉桃華が、一人でノートPCに向かって作業をしていた。
「おっ、今日はモモカ、一人なのか?」
声をかけると、中学時代からの付き合いの下級生は、オレを見るなり食って掛かってきた。
「あっ、くろセンパイ! 二週間も部活に来ないで、ナニやってたんですか!?」
「ちょっと、放課後に用事があってな……今日から、本格的に部活に復帰するつもりだから、そのことを鳳花部長に報告しようと思って、部室に顔を出したんだ」
ちなみに、同じ部員で親友の黄瀬壮馬もそうだが、オレたち広報部の部員は、活動の内容がともなっていれば、ミーティングの日以外は、特に部室に顔を出す必要はない。
先週、クラブ訪問の取材をこなしていたオレと同様に、壮馬も校内のどこかで、あいつの専門の映像撮影に関する作業をしているはずだ。
「そういう桃華は、パソコンに向かって、なにしてるんだ?」
オレは、PCに向かって、顔の表情を変えたり、両手を動かして派手なジェスチャーをしている後輩女子にたずねる。
「二週間も部室に来なかったセンパイに代わって、広報部の次の活動に向けた、あたらしい取り組みを始めようと、ワタシはがんばってるんですよ。あと、雪乃ちゃんは、鳳花センパイと一緒に文化系のクラブに訪問に行ってます」
そう言いながら、桃華は、相変わらずPCのディスプレイに対面したまま変顔をしたり、大きなリアクションを取ったりしている。
「ところで、隣にいる男子は、どちら様ですか?」
チラリと視線を向けた下級生女子の問いかけに、さっきまで不安そうにしていたクラスメートのスイッチが入るのがわかった。