Tomohito_Asuma

自作の小説などを公開させてもらっています。 今後の創作活動のために、コメント・ご感想などいただけると嬉しいです。

Tomohito_Asuma

自作の小説などを公開させてもらっています。 今後の創作活動のために、コメント・ご感想などいただけると嬉しいです。

最近の記事

初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜⑨

 同級生の佐藤テルと上級生の大山キャプテンへの取材が終わると、オレは、緑川武志の腕を掴み、 「今日は、時間を取ってもらってあざっした! 次の取材先に行かせてもらいますね」 と、あいさつもそこそこに、次の訪問先である吹奏楽部に向かう。今度は、クラブの幹部が女子生徒中心なので、少し安心である。 「なんだよ、黒田……せっかく野球部のメンバーと話すことが出来たのに……広報部のクラブ訪問って、忙しないんだな……それより、僕の『ツカミ』と『イジリ』は、どうだった? 自分では、わりと

    • 初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜⑧

      「こうなると、今さら尾羽の短いオスがあらわれても、メスには相手にされない!」  そう断言してから、またもシロの一人芝居が始まる。  ヒソヒソ……「ねぇねぇ、あのオスさぁ、尾羽が短すぎじゃない?」  ヒソヒソ……「ホントだ〜! アタシ、メスかと思っちゃった〜!」    「「ねぇ〜! 尾羽が短くて許されるのは、小学生までだよね〜!」」  クッ……なんて、腹の立つメスたちだ……!  ここは、オスの尊厳をかけて、発言しなくては!! 「ちょっと待ってくれ! メスの中には、尾羽の

      • 初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜⑦

         少しだけ、オレの方に視線を向けた緑川武志が、すぐに野球部の女子マネージャーに向き直り、 「すいません、この羽根、高価なモノなので、触れないでもらえますか?」 上級生の親しげな申し出をキッパリと断ると、中江先輩は、気まずそうな表情で、伸ばしかけた手を引っ込めて、 「あっ、ゴメンね……そんなに高級なモノだったんだ」 と、謝罪の言葉を口にする。  そんな申し訳なさそうなようすの先輩に、緑川は表情を変えずに返答する。 「はい、ネット通販で10本600円で買いました」  

        • 初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜⑥

           翌週の月曜日――――――。  週末に、みっちりとシロの講義を受けた緑川が、登校することになった。  アドバイザー役の歯に絹きせぬ言動と時おり見せる過剰な演技にも動じることが少なくなってきたので、大丈夫だとは思うが、念のため、この日は、いつもより早く自宅のマンションを出発して、緑川の自宅に寄ってから一緒に登校することにした。    万が一……という心配もよそに、目元の表情に明るさが見られるクラスメートは、初夏の季節でもマスクを装着している。  これには、二つの狙いがあり、ひ

        • 初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜⑨

        • 初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜⑧

        • 初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜⑦

        • 初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜⑥

          初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜⑤

          「いきなり、そういうハイレベルな問題を出されても困る! なにか、ヒントは無いのか?」  唐突に出題されたクイズに正解を出すべく、オレが、何か手掛かりになることはないのかとたずねると、隣では、緑川が 「そうだ! ヒントをくれよ!」 と、必死なようすで、訴えかけている。 「そうだよね〜。それがわかっていれば、二人とも苦労はしないよね〜」  ニヤニヤと微笑みながら、オレたちをイジるシロ。彼女は、さらに続けて語る。 「それじゃ、大ヒント! 答えは、少女マンガの中にある!」

          初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜⑤

          初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜④

          「さて、ターゲットにする女子と目標も決まったことだし、もっと、細かく作戦を練っていこうか? クロ、山吹サンって、どんなコなの? 当然、情報は集めてくれているんでしょう?」  いつものクン付けではなく、相性呼びに加えて、笑顔で語りかけてくる女子生徒に、「さすが、シロ……こっちの行動はお見通しか」と、苦笑しながら、オレは、鳳花部長から受け取ったファイルを取り出す。  ここには、今回の『緑川武志復帰作戦』においてカギを握る重要人物の情報が記されていた。  「山吹あかり。5月2

          初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜④

          初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜③

          「緑川クンが、前向きになっているなら、もちろん大歓迎だよ! せっかくのご指名だし、期待には応えないとね!」  自宅に戻ってから、シロに本日の成果を報告し、アドバイザー就任を打診すると、想像していた以上に、アッサリと快い返事をもらうことができた。シロが協力を渋ったときのために、いくつかの説得案とともに、どうしてもオファーを受けてくれない場合には、代替案を考えなければ……と思っていただけに、すんなりと協力を申し出てくれたところまでは、良かったのだが……。 「それだけ、クロにも

          初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜③

          初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜②

           鳳花部長への報告が終わったあと、オレは、前日までと同じく、緑川の家に向かう。  ただし、今日は、オレ一人での訪問である。クラスの現状を伝えたり、緑川本人から、自身についての近況やプライベートなことを聞き出すなら、前日と同じく、一対一での会話のほうが良いと考えたからだ。  緑川の母である優子さんには、午後五時頃に訪問すると約束していたので、まだ少し時間に余裕があるということもあり、緑川家に向かうあいだ、オレは、交通手段である自転車を押しながら、鳳花部長との会話で気になったこ

          初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜②

          初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜①

           シロと一緒に、緑川武志を美容室に連れて行った翌日の放課後――――――。  オレは、四日連続となる緑川家の訪問の前に、相談室で担任のユリちゃんこと谷崎先生に、これまでの経過報告を行っていた。 「というわけで、紅野さんと白草さんのおかげで、緑川を外出させて、イメチェンすることに成功しました。緑川のお母さんも、『まあ、見違えるように格好良くなって……』と感激してましたよ」 「そうなの。黒田くん、色々とありがとう。それで、緑川くんは、学校に来れそうなの?」 「はい、諸々の準備

          初恋リベンジャーズ・第四部・第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜①

          初恋リベンジャーズ・第四部・幕間〜女々しい野郎どもの唄〜①

           黒田竜司が、進級した2年A組のクラスメートを連れて、自分の家を訪ねてきた二日目の夜のこと――――――。  この家の2階の一室の主である緑川武志は、一枚の紙切れを手にして、迷っていた。 「この動画が、なんだって言うんだよ……」  彼の部屋のドア下のわずかな隙間から差し込まれた紙片には、2つのバーコードが印刷されている。 「オレはヤリチンと言われる程、女子には相手にされてない。その根拠は、ネット上にある。時間があったら、ドアのところに置いておくメモのQRコードを読み取っ

          初恋リベンジャーズ・第四部・幕間〜女々しい野郎どもの唄〜①

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑬

           徒歩で美容室へ向かう途中、オレは、クラスメートに声をかける。 「緑川、さっきも言ったけど、これから行く美容室は、白草の紹介だ。お礼を言っておけよ」  すると、男子生徒が反応するに、シロが口を開く。 「あらためまして……ご紹介にあずかりましたビッチ2号です」  表情こそ穏やかな笑みをたたえているが、言うまでもなく、その目は笑っていない。  ある程度、予想はしていたことではあるが、やはり、シロは前日に受けた暴言を簡単に許すつもりはないようだ。   「うっ……昨日は、酷い

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑬

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑫

          「そうだったのか……」    緑川の表情に、ただならぬものを感じながら、オレは短く返答するのが精一杯だった。  それが事実なら、たしかに、自分の部屋に籠もってしまうくらいのショックを受けたということも十分にありえる。 「黒田……おまえは、二回も続けて女子にフラレて、よく平気でいられるな……僕は、もう立ち直れる気がしない」  唇を震わせながら、なんとか微笑もうとするクラスメートの顔色は、見るだけで痛ましく感じられ、声をかける。 「そうか……オレも、その気持ちはわかるよ」

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑫

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑪

          「ぼ、僕の話しなんて聞いてもつまらないぞ!?」  警戒するように、緑川は言葉を返す。 「3学期の終わりから、5月の間に二回も別の女子にフラレたオレの話しよりショボくれた話しなんて、あり得ねぇよ……それに、こうして、『三顧の礼』を尽くした仲だ。少しくらい、緑川のことを話してくれないか?」  自虐的な笑みを浮かべながら肩をすくめたあと、彼の部屋の蔵書である横山光輝の『三国志』の故事にならってうながすと、クラスメートは、覚悟を決めたようにうなずいた。 「わかったよ! だけど

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑪

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑩

           あらためて訪れた緑川武志の部屋を見渡すと、書斎と言っても良いほどの書棚の数と、その書棚に収まる本の数が目についた。小説やコミックのタイトルは、歴史モノが多いことに気がつく。また、判型を問わず、ライトノベルのタイトルも、いくつか確認できる。 「――――――で、僕に聞いてほしい話しってなんなだよ?」  オレに、学習机に備えつけの椅子にうながし、自身はベッドに腰掛けた緑川は、そう切り出してきた。 「昨日、置かせてもらったメモの動画を見てくれたのなら、だいたいのことはわかるだ

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑩

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑨

          「えっ!? なんの音だよ!?」  声を上げる緑川の反応に、オレは手応えを感じた。打ち合わせどおりなら、この音は広いバルコニーが発生源のハズだ。  ブンッ――――――‼  もう一度、音が鳴ると、籠城している部屋の中の緊張感が、こちらに伝わって来る。  さらに続けて、シャッ! というカーテンを開く音が聞こえると同時に、室内からは緑川武志の 「う、うわ〜〜〜〜〜!」 という、なんとも情けない声が聞こえてきた。   「な、なんだよ黒田! なんで、金属バットを持ったヤツが、バ

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑨

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑧

           緑川家への二度目の訪問を終え、シロと作戦会議を行ったあと、オレは野球部に所属する同級生に連絡を取った。二年生にして、チームの四番を任されている佐藤照明は、オレの頼みを快く引き受けてくれた。  オレのプランが計画どおり進むなら、引きこもってしまったクラスメートを自室から連れ出す「天岩戸プロジェクト」は、そろそろ、大きな転機を迎えるハズだ。  翌日、オレは担任教師への経過報告と、この日の活動予定を伝え終えると、シロと佐藤とともに、緑川家に向かうことにした。ユリちゃん先生には

          初恋リベンジャーズ・第四部・第1章〜愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ〜⑧