負けヒロインに花束を!第2章〜ふられたての女ほど おとしやすいものはないんだってね〜④
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【緊急】
ミンスタグラムで四葉ちゃんの
投稿を確認すること!
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その日の放課後、帰宅の準備を終えて、スマホを確認すると、ワカ姉からLANEのメッセージが届いていた。
そんなに切羽詰まった様子で何事か……と、感じながら帰宅して自室に戻ってからスマホを操作する。
価格が安くなっていたアンドロイド端末の型落ちモデルを両親に買ってもらった日に、ミンスタグラムのアカウントは作っていたのだが……。
このアプリを起動するのは、このスマホ購入初日以来のことかも知れない。
使用頻度が極端に低いため、「SNS・エンタメ」のフォルダに入ったままのミンスタグラムのアイコンをタップし、『白草四葉』と検索する。
すぐに、認証バッジと呼ばれる著名人、有名人、ブランドなどのアカウントが本物であることを証明する青色のチェックマークが付いたアカウントが見つかった。
フォロワー数が、余裕で100万人を超えているclover_fieldのアカウントをフォローし、投稿を確認すると告知動画が投稿されていた。
――――――本日の『よつばチャンネル』!
――――――今週は、みんな大好き恋のお悩み相談!
――――――今回のお悩み相談では、前回の動画のコメント欄にいただいた、こんなお悩みに答えるよ!
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相談したいのは、クラスメートのことです。
自分のクラスには、幼なじみで良い雰囲気の男女が居るのですが・・・
この春、転入生が転校してきて、男子の方が、その転入生と付き合い始めてしまいました。
自分としては思うところがあって、幼なじみ同士の二人を応援したい気持ちがあります。
彼女がデキてしまった男子と付き合うための方法があれば教えてもらえないでしょうか?
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――――――う〜ん、彼女がいる男の子を好きになっちゃうと、どうして良いかわからなくなるよね?
――――――そんなシチュエーションが来たときのためのアプローチ方法とNG行動をお伝えするよ!
――――――いつものように、YourTubeライブの放送は、金曜日の夜8時から! お楽しみに!
自室のベッドで横になりながら、わずか、30秒ほどの告知動画を見終わったあと、驚きと緊張のあまりスマホが手から滑り落ち、見事にアンドロイド端末を顔面でキャッチするハメになってしまった。
が、気を取り直して、すぐに、ワカ姉にLANEでメッセージを返信する。
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【悲報】
オレ氏のお悩み相談
四葉ちゃんの配信に採用される
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メッセージの送信後、しばらくして、「ふむり」とうなずく、ウサギのスタンプが送信されてきた。
その夜は、ワカ姉の帰宅を待って、再び、状況報告を行うことになった。
――――――やっぱり、アンタの相談だったんだね! 宗重、なんだか面白いことになってるじゃん!
「いや、まさか、自分がコメント欄に書き込んだ内容が、人気配信者のお悩み相談に採用されるとは思ってもいなかったから……正直、ちょっと焦ってる」
――――――まあまあ、四葉ちゃんのお悩み相談は、匿名が基本だし、アンタが相談主だってわかる人は、ほとんど居ないよ。それより、アンタのクラスの幼なじみちゃんと転校生ちゃんの関係を良く簡潔にまとめたね。四葉ちゃんも、なにか気になるところがあって、アンタの書き込みを採用したんじゃないの?
「本人からすると、あんなに短い内容で、良く相談に乗ろうと思ってくれたな……って、感じなんだけど……でも、彼女がいる男子に対するアプローチとか、そんな有効な方法が、ホントにあるのかな?」
――――――それは、どうだろうね〜? でも、あのコは、アメーバTVで放送してる『人狼ちゃんには騙されない』で、相手の男の子たちと視聴者を手球に取って、騙しきった猛者だからね〜。ナニか、そういうノウハウを持ってるんじゃない? 知らんけど(笑)
ワカ姉が言っている『人狼ちゃんには騙されない』というのは、ネット配信されている恋愛リアリティ・ショーで、真実の恋をしたい男女が本気の恋に落ちていくまでを追いかけるという内容(らしい)。ただ、メンバーの中には絶対に恋をしない嘘つきの女性である《人狼ちゃん》が潜んでいる。そのため、出演者は誰が本気で自分を好きと言っているのかを見極め、かつ自分が人狼ではないことを相手に信じてもらう必要がある。タイトルのとおり、この心理戦は、人狼ゲームにヒントを得たものだそうだ。
白草四葉は、その初代の人狼ちゃん役として、同世代の女子から注目を集めているらしい。
「オレは、その番組を観ていないから、四葉ちゃんのスゴさはわからないけど……もし、彼女がいる男子に対する有効なアプローチが方法なんてモノがホントに存在するなら、ちょっと聞いてみたい気はする」
――――――そっか! 今まで関心のなかった世界の出来事に、興味を持つのは良いことだよ!
ワカ姉の口調からは、彼女が、オレの周囲で起こっている状況を楽しんでいることだけは、良くわかった。
とは言え、今回の相談の主要人物であるオレのクラスの副委員長が、相手への想いを断ち切ろうとしているなら、四葉ちゃんのアドバイスがどれだけ有効なモノであっても、無駄になってしまうのだが……。
そんな懸念を抱いていたオレは、翌日、上坂部葉月に降り掛かる、とある問題を目にすることになる。