オーストラリアのPeer to Peerファンドレイジングの現在地:B Corp企業Raisely主催のオンラインサミットと現地NPOからの学び
B Corp認証を取得しているオーストラリアの企業Raiselyが主催したオンラインサミットにて、同社のプラットフォームを活用した2022年のファンドレイジングの取組みのデータとそれらを元にした提言が共有されました。その中で、Peer to Peerファンドレイジングについて結構なボリュームが割かれていました。
また、Raiselyを使ってPeer to Peerファンドレイジングを実施していたオーストラリアのNPOにもボランティア参加したので、それらから得た情報や気づきもまじえながら、日本のファンドレイジング関係のみなさんの参考になればと思い、本記事を執筆します。
今回のテーマであるPeer to Peerファンドレイジングとは、団体側が主導するファンドレイジングとは異なり、個人が特定の団体のために周囲の友人・知人から寄付を募っていくファンドレイジングのことを指します。2016年前後から海外で注目され始め、2018年頃から日本でも取組みが少しずつ出てきて今日に至っています。
なお、Raiselyのウェビナーのアーカイブ動画とスライド資料は、本記事執筆時の2023年7月時点で、名前・メールアドレス・所属・住んでいる国名を登録すると誰でも見られるので、興味のある方は下記URLからご覧ください。
ちなみに、B Corp認証について知りたい!という方は、下記の記事と書籍をご参考ください。
サマリー
Raiselyで約600団体が実施した約1800のPeer to Peerキャンペーンと約450,000のファンドレイザー(寄付を募った個人)のデータからの知見と提言の要点は以下の通りです。企業主催のウェビナーであるが故、自社のプラットフォームを使う前提での提言となっていますが、日本のソーシャルビジネスの方々が自社サービスの改善に活かしていけるポイントを見出す参考にはなるかと思います。
キャンペーンに参加して寄付を集める人達全員が「ファンドレイザー」
興味深かったのは、RaiselyではPeer to Peerファンドレイジングのキャンペーンに参加して、寄付を集める人達全員を「ファンドレイザー」と呼んでいる点です。これこそがPeer to Peerファンドレイジングの特徴でもありますが、寄付を募る彼ら・彼女らは、必ずしもファンドレイザーの資格保持者やファンドレイジングの業務経験のある人達だけでなく、一般の人達も参加することができます。
草の根的に、このようにファンドレイジングを経験する人が増えていくことも日本の非営利活動にとって大切なことですので、日本においてもRaiselyのようにプラットフォーム側の工夫や働きかけでできることがもっとあるかもしれません。
団体や個人の「つながり」を活かすファンドレイジング手法
私がメルボルンで活動するNPO「Helping Hoops」のチャリティイベントにボランティア参加したところ、Raiselyを使ったPeer to Peerファンドレイジングもあわせて行われていました。キャンペーンページを確認したところ、参加していたファンドレイザーは130名以上、最終的には1000万円以上の寄付が集まっていました。スタッフに聞いたところ、その「ファンドレイザー」達は何年も前から活動に参加してくれてる人はもちろん、その人達やスタッフ達が声掛けをして参加してくれた友人も結構いるとのこと。2009年の活動開始時からの積み重ねを感じさせられます。
結局のところ、寄付を集める団体側が協力してもらえる人とのつながりがどれだけあるか、寄付をしてくれる人達とのつながりを持つ個人にどれだけ協力してもらえるかが大前提となるファンドレイジング手法であることは日本と変わりはないということが分かりました。(一方で、Raiselyの機能が日本の各種ファンドレイジングプラットフォームを遥かに凌ぐ充実ぶりでした)
私は、日本以外ではアメリカとオーストラリアのファンドレイジングカンファレンスに今まで参加しましたが、寄付者やステークホルダーとのRelationship Building(関係構築)やRelationship Management(関係性のマネジメント)について様々なセッションで言及されていたことを思い出します。今回のRaiselyのウェビナーや現地NPOの事例から、ファンドレイジングにおける他者とのRelationship(関係性)の重要性を改めて考えさせられました。