日本語が美しい曲3選 其の二
おはよう御座います。
前回に引き続き、
第2回目の日本語に拘った素晴らしい曲を取り上げていこうと思います。
今回は男性ソロアーティストで縛った三曲となります。
小袋成彬 - Selfish
”過ぎた車の静けさが僕を一人にさせた頃
名前も知らない遠い山に覚えた小さな怒り
その頃の僕は君にはきっとおかしく見えただろう
何も伝わらないのに何から伝えればいい
時代に華を添えたくて 筆を取ってる訳じゃない
もう君はわからなくていい”
音楽レーベルTOKA(元Tokyo Recordings)の
代表取締役も務め、様々なアーティストをプロデュース、
その後ソロ活動を行い始めた小袋成彬さん。
2rdアルバム「Piercing」、3rdアルバムの「Strides」も大好きなのですが、
敢えてこのテーマなので1stアルバムの「分離派の夏」から一曲。
分離派の夏はとても内省的な曲が多く、このアルバムを通して聴くと
自分の心の中の何か一つ浄化されていくような。情緒深いメロディーと展開、
上手すぎるのに必要最低限、表現の為だけに使いこなされたテクニックに、
嘘みたいに食らって鬱になった後、ちゃんと冷静に前向きになれる感覚。
ヘルマンヘッセの小説の読後感になんとなく似ている。
偉大なのに突き放さない。そんな芸術作品。
宇多田ヒカルが惚れた声とメディアに取り上げられ、
テレビでの生出演でこの曲を歌っている小袋成彬さんが少し皮肉で素敵でした。
最後のフレーズなんかは、英語でしか不可能だと思っていた
気の利いたロマンチックな言い回し、複雑で混在した心情を違和感なく、
日本語で表現出来るんだと感じました。
ALFRD - 眺める
"落ちていった花瓶 吹き上がった砂塵
罪を見逃し、辿り着く境地
憂は繰り返し、陽は出ぬ一向に
騙し騙しで消えた杞憂 騙し騙しまた花は散る"
僕がよくチェックしているApple MusicのWASABIというプレイリストで流れ、
おぉ、この人は何者だ、と一聴惚れした方です。
トラックの素晴らしさは勿論、聴いててとても気持ちのいい押韻、
羅列された言葉がイメージを膨らまし、没入させられる音楽だなと感じました。
自身でトラックも作っている方らしく、若くして才能が凄く、
個人的に方向性やスタイルが好みで、これからもっともっと聴きたい方です。
ZORN - かんおけ
”一度きりの人生 1秒1秒死へ 日常に忍び音
霧も切り通して 未知の道を行け
生きろ嬉々として 日々の意味を知れ
木々の幹の威厳 ミリの塵の人間
明日のことなんてsiriも知りもしねぇ
でもまだ未来は俺等の手の中
今動いた嫁のお腹”
このnoteで初めての日本語ラップシーンから、この方。
ヒップホップを聞かない方でも感じられるであろう詞の凄さや
一種の読み物としても面白いくらい、
起承転結、素晴らしい構成の曲が多いZORN。
改名前のZONE THE DARKNESS時代に出している曲も詩的で、
とても燻っているような曲も多く、
ZORNさんの人生通して変化していく心境、環境など、
大切なことを考えさせられる内容の曲が多いです。
ZORNさん自身が"韻の飛距離"と述べていたように、
シリアスな言葉と、そこからかけ離れた少し気の抜けるような日常的な言葉で
韻を踏むようなスタイルも特徴的です。
THA BLUE HERBのO.N.Oさんをトラックメイカーに迎え、
"未来は俺等の手の中"と曲名をリリックの中でサンプリングし
畳み掛けるような最後のverseは何度聴いても鳥肌が立ちます。
はい、というわけで今回は男性ソロアーティストの三曲を取り上げてみました。
僕の好みなのか少し雰囲気がシリアスめに偏ってしまったかもしれません。笑
本当に音楽は勿論、日本語に真摯に向き合い続けている方々だと思うので
もし聴いた事がないアーティストがいたら是非聴いてみてください。
では、また。