[tabinote #5]旅は直感に従う@KL
マレーシアの首都クアラルンプールは、僕が訪れた2012年はまだ空港から市街へ出るのにバスや列車など良い交通手段がなく、タクシーを選ばざるを得なかった。
クアラルンプールで泊まったドミトリーで、馬場さんという旅人に出会った。
馬場さんは旅の経験が豊富で、彼からいろんなことを教わった。
オープンで明るく誰に対しても壁がなく、いつも直感を信じ、「自分」を持っている人だった。
僕がアジアを旅しているにもかかわらず、旅の初めは金銭感覚がわからずに、毎日節約していると、「アジアは思いっきり使っても他の大陸を旅するよりずっと少ないお金で旅できる。今贅沢しないとこれからもっとキツくなるよ」と言われた。
彼からそう言われてから、僕は飲みたいときはコーラも買うし、思いっきり食べたい時はレストランにも行くようになった。
それでも、アジア8ヶ月の旅で諸々使ったのは40万円程度に収まったから、馬場さんには感謝しかない。
ある日、一緒に食堂にご飯を食べに行くと、その日はガラガラでどの席でも座れるような状況だった。
すると馬場さんは少し考えるようにして、あたりを見回しじっと黙った。
僕が「どうしました?」と尋ねると、「ここやめて他の場所にしない?」と提案された。
そうして、その日は野外の屋台でご飯をすることにした。
後から馬場さんに、なんであそこやめたんですか?と尋ねると、特にこれといった理由はなく、ただそういう気持ちになったから直感に従ったのだと、言っていた。
彼はどんな時も自分の直感を大切にしていた。
また別の日、僕はそろそろクアラルンプールから移動しようと思いながら、次にどこに行くべきかと悩んでいた。
相談すると、馬場さんはマラッカがおすすめだよと教えてくれた。その後ペナン島も行くといいよと。
バス会社に行って、僕はマラッカ行きのバスを予約しようと思った。しかし、チケットは既に売り切れだという。マラッカに行きたければ後数日待たなければならなかった。
念のためペナン島行きはあるかと尋ねると、ペナン行きはあった。
そこで、僕も馬場さんに習い、直感で数日待ってマラッカに行くか、ペナンに行くかと自分に問うと、ペナンだと心から回答がきた。
その直感を信じてペナンに行くことに決めた。
いつもだったらウダウダ悩んで、結論も出なかったろうけど、馬場さんが教えてくれた、直感は最良の先生だということを早くも実践する機会が訪れ、それは本当にその通りだと実感した。
クアラルンプールで馬場さんと過ごした数日間、僕達はいろんなテーマについてよく語り合った。
旅で持っておくべき荷物は何かと尋ねると、S字フックだと言って、彼は常にカバンにS字フックが入っていたのを見せてくれたし。
外国人と日本人の英語の発音について議論したり、将来のテクノロジーについてどう思うか、セックスマイノリティの話、世界中のどこに住むべきか、お互いの経歴、家族関係、様々なことを話し合い、よくご飯に行った。
そうして数日間を一緒に過ごした後、彼がクアラルンプールを発つ日がやってきた。
僕はまだ出発しないですよね、と念押ししてから近くの食堂に一人ご飯を食べに行った。
そうして、帰ってきたときには、ドミトリー部屋から彼の姿と彼の荷物はすっかりと消えていた。
挨拶もできずに彼は行ってしまったのだ。
寂しい気持ちもあり、しかし馬場さんらしいなと思い、ふっと笑ってしまった。
長い旅の最中も、日本に帰ってきてからも、僕は何か選択を迫られた時、「直感」を信じるようにしてやってきた。
これが、案外うまくいってるようにも思う。
直感に頼るのは、一見すると科学的ではないようにも感じるが。
実は直感は一番自分のことを知り尽くしているのかもしれない。
脳にが記憶している、僕がアクセスできない膨大な過去の経験を参照して、そこから最善の一手を教えてくれる。
それが直感なのだ。
と、僕はそう思っている。
旅に失敗はない。全ての経験が良い思い出になる。
そういった意味で、時には頭の考えに従うのではなく、心の声に従って、直感を信じて行動すると、良い結果を導くこともある。
Life is a journey !